アケルナル漂流


プロローグ

1998年冬、京都の街で。


いま会うことのできる、大切な人へ。
僕は幾らでもあなたの力になりましょう。
遥か昔に失った、大切だった人へ。
僕はもうあなたに手をさしのべることができません。
けれども、もし、それが叶うなら。

あの頃の僕らは幼すぎて、大切なあなたの力になってあげることができなかった。

幼い頃に別れてしまったあの人のことをポラリスに祈る。
ポラリスは時を遡る願い星。
この北の不動星に願えば、
過去の時間が甦る。
時間も場所も飛び超えて、 もう居場所も分からなくなってしまったあの人に会うことができるという。

けれども、ポラリスはあまりに遠すぎて、
僕らの声は届かない。

消えた転校生とポラリスの噂。
彼女は大切だった誰かのことを探して、 ポラリスへ旅立ったのだという。

 幼い日、
 少女は言葉を話す猫と友達だった。
 少年は隣のお姉さんに恋をしていた。

あの頃よりも少し大きくなった僕らは
遠い日の大切な思い出たちが
時間の霧の中に消えてしまう前に、
ほんとうのことを確かめなければならなかった。

そして僕らは旅に出る。
目的地の名は、ポラリス。

この地の名は、アケルナル。


紹介

過去とは日を追うごとに美しくなるものです。
幼い頃に一緒だったあの人と過ごした、大切な思い出の日々と、
現在との交差点。

誰かが昔会ったことのある誰かと似ていて、 はっとすることがありませんか?
そんな水のように移ろいやすく混ざりやすい、人の心と記憶。

皆さんは15歳の少年少女となり、 過去の思い出を追いかけ、京都の街を彷徨します。

自分はどうありたかったのか、
今はどうなのか、
これからはどうありたいのか、
でも選べる道は一つだけ。
そんな決定の物語をファンタジーにしました。

プレイヤーの役柄として、 遠い昔にいたはずの愛するものの記憶を失ってしまった猫、 というものが用意されています。 人の言葉を喋るとてもファンタジーな猫ですが、 本セッションはあくまで少年と少女にとってのファンタジーなので、 自分の行動が少年・少女のファンタジーにとってどんな意味をもっているのか 考えながら動く必要があります。

ファンタジーの名脇役を演じられるか、というところで、難しく聞こえますが、 けしてサブマスターとして任されてしまうのではなくて、 一プレイヤーとして楽しめるように作ったつもりですし、 マスターとしてもシナリオの中にそのサポートをいろいろ織り込んでいますので、 ぜひこの機会にチャレンジしてみてください。

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寿琅啓吾 <soga@summer.nifty.jp>