アケルナル漂流・設定


背景・登場人物の設定です。

背景

舞台は1998年師走の京都。
一年がまたいつものように静かに過ぎ去ろうとしています。

物語は東山区南禅寺の近くにある東陵学園中等部に通う三年の少女と少年、 そして夜光鐵道の車掌である鐵道猫を中心に進み、 またこの三名が、参加者の選ぶことのできる役柄となります。

土曜日の朝。 永田という三年の生徒が一週間前に行方不明らしい、という噂が生徒たちの間でうわさになっています。永田は三年から転校してきた少女で、少女は二三言葉を交わしたことがある程度、少年には面識がありません。

「なくしてしまった大切な人たちを捜しにポラリスへ行くの。」

彼女は一週間前にそう友達に言い残してどこかへ行ってしまったのだといいます。

ポラリスとは、最近学校の女子の間で流行っている噂です。 ポラリスとは北極星のことですが、 この北極星に願えば、私たちが幼い頃に別れた大切な人に会うことができる、 けれども、ポラリスはあまりに遠すぎて、私たちの声は届かない。 その願いは、直接ポラリスへ行かなければ、叶えられることはない。 近くの学校の生徒が実際、ポラリスへ行ってしまったとかいう話が、まことしやかに噂されています。

けれども、それも昨日までは単なる噂で終わっていた話です。

みなさんは、それぞれ理由があって、昔からポラリスなる場所へ行きたいと考えていました。 そして、過去の思い出と現在とが交差する予感を感じながら、始業のベルが鳴るのです。


登場人物

少女

過去

ずっと京都の街に住んでいます。

あなたには何らかの理由で生まれたときから父親がいません。

幼少時、人見知りをする性格で上手く友達を作れなかったあなたのはじめての友達は、人の言葉を話す猫でした。 彼は、気が付けばいつもあなたと一緒でした。 楽しいときには一緒に笑い、 悲しいときにはあなたをなぐさめてくれました。

けれども、小学校に入ってしばらくたった頃、 低学年の頃だったでしょうか。 彼は突然あなたに別れを告げたのです。

「僕はポラリスに行かなくちゃならない。
 僕にはやらなくてはならないことがあるんだ。」

別れを悲しみ一緒に行きたいというあなたに、 彼はこうもいいいました。

「今は僕のことを追いかけないでほしい。  君が僕のことをほんとうに分かるのは、  僕が君にとって何だったのか分かるのは、  君がもっと大きくなってからのことなんだから。  だから、今は、もう泣かないで。」

そして、また会うための印にネジ播きの懐中時計をもらいました。

それはもう随分昔のことで、 彼のことはあまりはっきりとは覚えていませんが、 今でも大切な人、大切な思い出であるのは確かです。 彼は本当に猫だったのでしょうか、 それとも喋る猫なんてありえなくて、 やっぱり彼は人間だったのでしょうか。 けれども彼の姿はどうしても思い出すことができません。

約束の時計はもらってしばらくすると壊れて動かなくなってしまいましたが、 ずっと今まで大切にポケットの中に持っています。

現在

東陵学園中等部3-A組に所属。
そう、中学に入ってもう三年が過ぎようとしています。

もう一度あの猫に会いたいと思う気持ち、 ポラリスへ行きたいと思う気持ちは日毎に高まってきます。 あれから大きくなったあなたは、 彼の言っていたように、彼のことが何か分かったでしょうか。

一方で、クラスメートの少年とは、三年間同じクラスでした。 少年は一番の男友達であるし、 それ以上に、最近あなたの中で彼の存在は大きくなったことも意識しています。

もしかしたら、彼があの時の猫なのではないか、ということも思っています。

そして、一週間前から、再び動き始めた時計。
これは、今朝聞いた事件となにか関係があるのでしょうか。

マスターより

  私は猫を飼ったことがありませんが、最近、飼うというか、なんか友達のようになれるといいだろうなと思います。それで猫と目があったら愛想をふりまくようにしてるのですが、なかなか上手くコミュニケーションがとれません。

もしも彼らが大切な友達で、それでもし、別れの時が訪れたとすればどうだろうか、ということを考えながら設定したキャラクターです。相手が人間の友達ではない、というところにファンタジーを含ませました。

特記事項

  • その大切な友達だった猫との思い出をなにか決めておくといいと思います。
  • この学園の中等部の制服がどんなのものかを決めておいてください。

少年

過去

昔、京都の街に住んでいて、小学校の途中で引っ越しをし、 また中学校で戻ってきました。

幼い頃、あなたは同じ街に住むお姉さんに恋をしていました。 ソラという名前の、多分あなたより年上だったそのお姉さんは、 あなたにいろんなことを教えてくれました。 けれども、その頃のあなたは幼すぎて、彼女の言っていることは半分も分かりませんでしたが、 それでも、なぜだかあなたはこのお姉さんのことが好きだったのです。

ある日、お姉さんは一緒にポラリスへ行こう、とあなたにいいました。 けれども、あなたはそれに頷くことができませんでした。 あなたにはポラリスというのがどこにあるのか、 それがどんなところなのかさえも分からなかったのです。

翌日から、もうあなたはお姉さんの姿を見ることはありませんでした。

それは、小学校低学年の頃、引っ越しするまでのことだったと思います。 あれから違う街へ行き、いろんな友達が出来ました。 記憶は薄れ、顔も忘れてしまいましたが、好きだという気持ちは変わりませんでした。 今でもしっかり覚えていることは、彼女がよくポラリスという星の話をしていたことと、 いつも白い帽子を被っていたこと。

そして、中学へ入ったとき、あなたはまたこの街へ帰ってきました。

現在

東陵学園中等部3-A組に所属。
中学に入ってもう三年が過ぎようとしています。

今なら、あのお姉さんの言っていたことが分かるでしょうか。 あのときお姉さんについてゆけなかったことに少し後悔を感じながら、 もう一度お姉さんと会いたいと思う気持ち、 そして、ポラリスへ行きたいと思う気持ちは日毎に高まってきます。

一方で、クラスメートの少女とは、三年間同じクラスでした。 少年は一番の女友達であるし、それ以上に、最近のあなたは、 彼女がお姉さんに似ているような気がしてならないのです。 そして、なぜだか、彼女には特別優しくしてしまいます。

マスターより

  ある時、ちらっと誰かに誰かのことを重ねて見てしまうと、なんだかその人に悪い気がすることがあります。 結局、自分は誰を見ているのか、あまり気にしすぎるのはなんだと思いますが、 バランス良く区別しなきゃ駄目な時もあったりします。 結局、本当に好きだったら、いつわりやごまかしはないと思います。 思う存分、揺れ動いて、最後には頑張って収拾をつけてみてください。

特記事項

  • お姉さんは、あなたのことをなんと呼んでいたかを決めておいてください。

鐵道猫

現在

あなたが夜光鐵道の車掌をはじめてどれほどの時が過ぎたでしょう。 それがいつからだったのか、そしていつまで続くのか、 この列車がどこへ向かっているのか、あなたには分かりませんでした。 この列車に乗る者は、みな過去に別れてしまった大切な人を探し求め、 そして道に迷ってしまった者たちでした。 あなたの仕事は、そんな彼らを応援することです。 乗客はやがて力を取り戻すと、列車を降り、再び旅に出るのでした。

けれども、あなたが本当に応援したい人は、ここには居ないような気がするのでした。 かつて、あなたには愛する人がいたように思うのです。 けれども、どうしてだかそれが誰だったのかを思い出すことが出来ません。 思い出せるのは、彼女が心から泣いた顔の印象だけ。

あなたの愛する人は誰だったのでしょう。 そう、確かにあなたはポラリスへ行ったことがありました。 ポラリスは別れてしまった大切な人に会うことのできる地。 それなのになぜ、あなたの愛する人はここにいないのでしょう。 その地であった出来事は全て忘れてしまいました。 あなたは、再びポラリスへ行ってその訳を知りたいと思っています。

マスターより

  影の主役。 人の言葉を喋るとてもファンタジーな猫です。 現代日本が舞台であるだけに、ファンタジーとしての説得力が要求されます。

本セッションはあくまで少年と少女にとってのファンタジーなので、 自分の行動が少年・少女のファンタジーにとってどんな意味をもっているのか、 自分がどうして猫のようなあやふやな存在であるのか考えながらプレイをしてください。 あなたの選択如何で物語は大きく変わるでしょう。

ヒロイックでないファンタジーが好きで、 本もそこそこ読んでる人ならば、問題なくプレイできると思います。

特記事項

  • もれなく秘密の設定がついてきます。

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寿琅啓吾 <soga@summer.nifty.jp>