Scene 6  Epilogue  感想戦  あとがき
『鳶の丘村』地図

Scene 5    真相
 緑の黒髪 風に流され、緑は銀へ 髪は・・・。

マスター:リィタはオルビスさんを呼んではいませんが。

キサナ:そばで隠れていてもらいましょう。それくらいの能力を持ってるってことは知ってるから。

オルビス:あまりしたくはないことなんだが。(言葉の響きが悪いので)《心配だから見守っている》、ということにしよう。

マスター:指定された場所は木賊屋敷の裏の川岸です。

キサナ:時間前にゆくよ。

マスター:リィタの方が早く来ている。あなた方三人が来ると目で会釈をします。夜、木賊屋敷の裏の木陰で。後ろにはさらさらと水の流れる音がします。月は満月。白い服に身を包んだリィタの姿は月光をぼんやりと照り返して夜の闇にすうっと消えてゆきそうです。

リィタ:「少し話したいことがあるの。これからいう話、信じてくれないかも知れないけど・・・(少し考えて)いえ、信じていただけるはずです。実はわたし、リィタじゃないんです。本当の姿は・・」

マスター:一陣の風がすうっと西から東へすぎると、リィタの髪はふわっと流され、キサナが、その髪のしっとりした香りを吸い込んだときにはもうリィタの姿はなく、そこには銀色のながい毛に包まれた、一匹の猫が。・・・ミャアです。

ミャア:「キサナぼうや、久しぶりね。・・本当のリィタはもうこの世にはいないの。五年前の帰翠祭の晩、リィタが川に流されたということがあったでしょう。・・・リィタはあれからずっと戻ってこなかったの。わたしは、ヨウタお婆さんとサムシュお爺さんがあまりに悲しむので見かねてリィタになって、戻ってきたふりをしたのよ。」

キサナ:「もう一人の娘がもう一人の娘に入れかわたっていいたいんだね。」

ミャア:「ええ・・・」

マスター:そういって、彼女は再びリィタの姿に戻る。

ミャア:「でも、お爺さんとお婆さんにはもうばれてるの。実の娘の分からない親なんていないわ。・・そう、わたしもリィタがいなくなってさみしかったのよ。それをリィタになることでごまかしていた、それを分かっていてくれたのよ。

 ・・・そして三日前、リィタは帰ってきた

 ・・・でも、リィタの魂のとどまるべき体はもうこの世にはなかった     

 5年前にリィタは川で溺れたあと、だいぶ流されたけど何とか岸にたどり着いたというの。でも、そのそばに運悪く人買いの連中のテントがあって、そいつらに拾われたリィタは悪徳の街マダオの盗賊団に売られたんだって・・・。四年の間、さんざん乱暴され地獄のような生活を送った後、ぼろぼろになってゴミのように捨てられ、リィタは死んでいったの。

 それで今年の帰翠会になってやっと、彼女は霊となって故郷の村に帰ることができたの。でも、そこには彼女の代わりにお爺さんたちといっしょに幸せそうに暮らしている私がいた・・・。そのときリィタはどれほどの絶望に打たれたでしょう。

 でも、私がそこで正体をばらしたら彼女はもっと・・・。それから、私は、あのとき村の人たちがこれなかった事情を話したわ。そしたらリィタは逆上して村人たちに復讐してやるって。そして私にも、正体をばらされたくなかったら、協力しろって。いえ、正体をばらされるのなんてどうでもいいけど、そんなリィタが見ていられなくて・・・。

(しばらく間。そして急に語気を強めて。)

 いいえ、違うわ。わたしは、リィタへの妬みがあったことを否定できない・・・お爺さん、お婆さんに一番愛されてるのはリィタだった・・・いっそこのままばれずに一生リィタとして暮らせたら・・・なんて。

 こんな醜い心をみんなに知られたくなかったのよ。」

マスター:と言って、うっとうつむく。

キサナ:そばに寄って、胸にそっと抱き抱えてやる。

ミャア:「そう・・それにリィタが川で溺れたのはわたしのせいなの。ふざけてばしゃばしゃしていたら、リィタはわたしをつかまえようとして・・・。」

キサナ:「もういいんだよ・・。」

ミャア:「一番苦しいのはリィタ本人なんです。どうか彼女を妄執の地獄から救うのを手伝ってください・・・。」

キサナ:「大丈夫だよ。僕はもう昔の僕じゃない・・・君やリィタを守れるなら守ろうと思うよ。」

ミャア:「キサナ坊や・・そう、リィタは帰翠祭の晩までに村の若者たちをいく人も殺そうとするでしょう・・・。どうかリィタを止めて!」

キサナ:「分かったよ・・・。」・・言いたいことはあるんやけどうまくセリフにならん。(少し考えて)「・・・人の心なんて予想できるもんじゃないっていうのはよく分かるよ。・・だから君がそのことを重荷に思うことはぜんぜんないんだよ。」

ミャア:「わたしは臆病だった・・・」

キサナ:「そんなことはないよ、こうしてぼくたちに昔なにがあったかを教えてくれた。そのおかげで僕はきっとリィタを助けることができるんだから。」

マスター:ミャアはあなたを強く、強く抱きしめます。

ミャア:「リィタを救って。」

キサナ:「わかったよ。・・・だから君はもう許されていいんだよ。」

マスター:この場にいる人、もし何か感じたなら、任意の感情を好きなダイスであげてください。

キサナ:「慈しみ」1d6・・・4上昇。

セレーグ:これから起こることに対する「やるせなさ」と何でこんなことになってしまったんだという「怒り」1d3ずつ。

オルビス:運命の悪戯、自分の運命と重ね合わせて・・・「哀れみ」・・・1しかあがらん。

キサナ:「酷いかもしれないけれど、きみもリィタを救う手伝いをしてほしい。」

ミャア:「・・・。」

セレーグ:「誰も君がしたことを責めることはできないよ。誰もがみんな誰かに愛されたいと思っているんだ。でもこんなことになってしまったからには決着は付けなくてはいけないだろう。」

ミャア:「ええ……そうね。それがわたしの役目ね。」

セレーグ:「もちろん、助けはいくらでもしよう、わたしのできる限りのことは。」

キサナ:「人がなにを考えなにを思うのかは自由だけど、その結果の責任はとらなくちゃいけないんだよ」

セレーグ:キサナの肩をポッとたたいて「それが分かるようになったら人は大人になるんだよ。」

キサナ:「(泣き笑いの表情で)ええ、そうですね。」とこたえる。

マスター:・・・結局、草履はどうするんですか?

オルビス:こっそりキサナにあって、「君にはこれが必要になるだろう。」とかいって、草履を渡す。(笑)

セレーグ:草履は誰が埋めたんだろう?

キサナ:だいたい推測はつくんやけど、というかカンやけど。二択くらいに絞れる。

セレーグ:わたしは三択。


《事の真相がだいたい分かった一行は、リィタがじきに活動に移ると見越して、とりあえず、今から川原を見て回ることにした。》



Scene 6  翡翠の川原
夜啼く鳥の、帰るところは何処。

マスター:そうしているとセレーグさん、にわかに邪悪な気配が漂ってくるように感じますよ。土手の向こうのほうから。

セレーグ:「むっ。」と、本能的に剣を構えてから、「くるぞ。」といいます。

マスター:あの姿は・・・タランでしょうか?しかし、その体は腐敗し、ぼろぼろと崩れています。

セレーグ:ゾンビって知ってるの。

マスター:ええ。だいたいゾンビみたいなものでしょうね。

セレーグ:「なに!あんなものまで操れるようになっているとすると、これは・・・。」

キサナ:「どういうことです、セレーグさん。」

セレーグ:見てても恐くないのか、お前は!

キサナ:「恐れ」しらずになってるもん。(笑)

マスター:そのゾンビは、「うぎゃあぁ。」と人のものとは思えない叫び声をあげて、こちらへ向かってきます。

セレーグ:では、私は一歩前へでます。がしっ、と切りつける。

マスター:当たりです。

セレーグ:13発。

マスター:半壊状態。反撃!

セレーグ:ありゃ、3がでた・・。

マスター:何やってんですか。当たりますよ。9発あげます。

セレーグ:あまり痛くない。それではこちらの番

 「・・・消え去れ!」

タランのゾンビ:「ぎゃあ、ぐはあぁぁぁ・・・。」

リィタ:「あなた達、何のつもりかしら。」

マスター:つぅ〜っと、すべるようにリィタが現れます。・・・じゃあ、ミャアが前にでて、

ミャア:「リィタちゃん、わたしの正体を教えてあげるわ。」すると彼女の体はすぅーっと猫の姿に変わる。

リィタ:「ミャア!な、何で・・・」

ミャア:「わたしは、ヨウタお婆さん、サムシュお爺さんがあまりに悲しむので見かねて、あなたに化けて、戻ってきたふりをしたのよ。……でも、そんなの言い訳かも知れない。わたしはお父さん、いえ、おじいちゃん、おばあちゃんが一番に愛していたリィタちゃんをねたんでいたということを否定できないわ。そう、それに村の人は悪くない。しょうがなかったのよ。悪いのはすべてよけいなことをした私よ。なにかするならわたしにして。」

一同:偽者の正体を知らなかったのか!

キサナ:ちょっと意外・・・ミャアをかばいながら、「リィタ・・もうやめようよ。君だって本当は助けてほしかったんだろう。でなけりゃぼくにあんな夢を送ってこないよね。」

リィタ:「なによ・・何なのよ・・」彼女は狼狽している。

キサナ:「君が四年間どれだけ苦しんだかは分からないよ。・・・でも、分かろうとすることはできるよ。そしてそれに対して共感することだって。」

リィタ:「・・・わかってる、わかってるわよそんなこと。でもね、どうすればいいの?あの地獄のような4年間は何だったの?この苦しさ、悲しさ・・・どろどろした感じ・・・・・どこにぶつけたらいいのよ!」

キサナ:「僕が受けとめてあげようか?」

リィタ:「・・・キサナ!!」といって彼女はあなたの胸に飛び込んできます。堰をきったかのように彼女は泣き出します。まるで、ただの十歳の子供のように。彼女の時間は、あの十歳の時のまま止まってしまっていたのかもしれません。

キサナ:「辛かったろう、苦しかったろう・・そんな思いは僕が受けとめてあげるから、君は今は笑ってよ・・・僕が好きだった、あのころのように。」

マスター:すると彼女は泣くのをやめてあなたをずっと見つめる。

キサナ:見つめかえそう。

マスター:そのまま、どれほど時間がたったでしょう・・・彼女は涙を浮かべながらふっと笑います。

キサナ:彼女の頤(おとがい)に手を当てて軽くキスをしてから、「・・また来年会おう。」といって草履を渡そう。

マスター:リィタは、にこりと笑って、

リィタ:「メディート様の御元で償いが終わったら・・今度はちゃんと草履をはいて帰ってくるから。」

キサナ:「うん・・待ってるよ・・・。」

マスター:・・・その透き通るような足にはいつのまにかあの青白い草履が。バサアッと、西から強い風が吹いたとき、リィタは月光に吸い込まれるようにふっと消えました。そしてキサナの手の中には、あの手鏡が残りました。

ミャア:「でもわたしは結局、村の人の命を奪う協力をしてしまった・・・。」

マスター:ミャアは、その場に泣き崩れてしまいます。

オルビス:「大丈夫だよ・・・人はいつも正しいことばかりをしてるわけじゃないんだよ。」

ミャア:「わたしはこれからどうしたらいいのかしら・・・。」

オルビス:「でも君はたった一人じゃないか。一人で進めばいい。そう、わたしの場合はいったい何千人の人を傷つけたことだろう。いや、君はそんなことは関係ないかもしれないが。君がしたことは自分の償いによって取り返しがつくんだ。しかし、わたしの場合は一体いつその償いができるだろうか。」(誰に言うでもなくつぶやく。)

セレーグ:「君自身はどうしたいと思っているんだ?」

ミャア:「・・・わたしは・・わたしはわたしのすべてをかけて償いを・・・。」

セレーグ:「なにが償いだと思っているんだい?」

ミャア:「・・・。」

キサナ:「ミャア・・・一緒に待とうよ、リィタが来年帰ってくるのを。」

ミャア:「待ってどうすればいいのかしら・・・。」

キサナ:「償いなんてどうやってやればいいのか僕には分からない。けれどもとりあえず、リィタとタランさんのことを忘れないでいようよ。忘れないでいる限り僕たちの心の中で生きているはずだから。」

ミャア:「ええ、それでいいのかしら。」

セレーグ:「君がなにを償いと思っていたかは知らないが、あまり自分を追いつめないでもいいと思うよ。」

キサナ:「一人じゃないんだよ君は。」

セレーグ:「わたしは君がそんなにひどいことをしたとは思えない。人間なんてものはすごく弱い生き物だから。間違いを犯すときは誰だってあるさ。」

ミャア:「ええ、セレーグさん。」

キサナ:「それにね、今君がいなくなったりなんかしたら、サムシュさんやヨウタさんが悲しむことにもなるんだよ。」

ミャア:「そうね・・・待ちましょう、キサナ、一緒に待ちましょう・・・。」

キサナ:薔薇石英のペンダントを握って、じっと見つめる・・・。

Epilogue   帰翠祭
翡翠となりて 帰りたるもの、これ帰翠。
一期一会の 旅人も、
いつか帰翠と なり果てて、
故郷の炎 目指すだろう。


マスター:それから数日が経ち、帰翠祭の晩になりました。村の真ん中の広場に、大きな焚き火が焚かれています。そのたちのぼる炎を目印に、死者の霊は天上へと帰ってゆくそうです。
 さて、オルビスさん、広場の端のほうに、死んだタランの妻、オデリアの姿が見えますよ。何かしますか?

オルビス:では、彼女に近づいていきます。

オデリア:「あら、オルビスさん。どう、祭は楽しいですか?」

オルビス:「・・・祭はいつ見てもいいですね。」

マスター:彼女は炎のほうを向いて、

オデリア:「・・・今はもうあの人も、あの炎の上で、この祭を楽しんでいるはずよ。だから、わたしもあの人に、幸せな顔見せて、明るく見おくらなきゃ。オルビスさん、広場の方へゆきませんか?」

オルビス:「そうですね・・・。」

キサナ:私は人のあまりいないけれど、炎の見えるところへミャアと一緒に座って、炎を眺めている。

マスター:そうしていると、去年の帰翠祭で見たあの旅芸人のお婆さんが広場の隅にいるのが、ふと目に入ります。

キサナ:行ってみよう。

旅芸人の婆さん:「おや、坊や、どうだい。去年あげた薔薇石英は?なつかしい人にあえたかい?」

キサナ:「ええ、会えました。でも、もうこれ、お返しします。」

旅芸人の婆さん:「おお、そうかい。もういいんだね?」

キサナ:「はい。もうこれに頼らなくても会えますから。」

マスター:お婆さんと別れ際、振り返った貴方の目に、一瞬、お婆さんが、貴方の母親の顔であるかのように映りました。

キサナ:(頷く。)

《・・・夜が更けるにつれ、祭の笛の音は高まり、祭は盛り上がってゆく。・・・そして、若者たちの姿はふらり、ふらりと夜の闇に消えてゆく。》

キサナ:ミャアと一緒に川岸を散歩しています。

セレーグ:私はエリュオンを見つけて、「おい、がんばれよ。」とかいって。(笑)

エリュオン:はっはっはっ。(笑)

キサナ:明るい奴らや〜!許されへん〜!!

セレーグ:だって、ここにはこういうフォローしかないんだもん。

キサナ:ひぃ〜い。

セレーグ:翌日、私は村を去ります。「キサナくん、頑張ったな。これで君はもう立派な大人だよ。いや、逃げなかった君は私なんかよりもずっと大人なのかもしれない。私も、もう一度自分の人生と、向き合ってみることにするよ。そして、誰か、私を愛してくれる人を捜すよ・・・。では、また、会うこともあるかもしれないけど、いまはさようなら。」

キサナ:「さようなら、剣士さま。」

オルビス:なんか今、すげえ個人的なことばっか考えてるんやけど。

  「いや、セレーグさん。」

セレーグ:「ああ、オルビスさん。」

オルビス:「貴方のような気持ちのいい剣士にあったのは初めてですよ。また、そうですね、何か大きなものに向かって一緒に戦いたいと思いましたよ。」

セレーグ:「多分、何か思うことがあるのでしょうね。」

オルビス:「今度、貴方と会うときは、一緒に私のために戦ってくれませんか?」

セレーグ:「その時に縁があれば、いくらでも力になりましょう。」

オルビス:「貴方はそう言ってくれると思っていましたよ。では、その証しに。」といって、愛用の短剣を差し出す。

セレーグ:「そうですね。それが運命(さだめ)ならばこの剣が導いてくれるのでしょう・・・。」

 受け取って、旅にでましょう。

オルビス:キサナに向かって、「真実はいつも苦い薬だけど、その苦い薬を飲んでこそ初めて、大人になれるんだ。より一歩、立派な人間になれるんだから。彼女のことも、しっかり受けとめてやれよ。」

キサナ:「はい。」

オルビス:「彼女のことはそれとしておいておいて、また、これからの、自分の人生のことを考えるんだ。しっかり。」

キサナ:「今はそんな気分にはなれないけれども、また、絶対立ち直って見せます。・・オルビスさんは旅立つつもりなんですね?」

オルビス:「ああ。この村にも四年間もいたのか・・・四年は長かったよ。俺は君よりずっと心が弱かったかもしれない。立ち直るのに四年もかかってしまったよ。やっと決心がついたんだ。・・・君と彼女の姿を見て。そう、私にはやらなければならないことがあるんだ。今度会うときは、そう、君を私の国に招待したいと思っている。」

セレーグ:そこまで明かしたの。

オルビス:自信満々。すげえ態度でかい。「その時までに、立派な若者になっているんだぞ。」

キサナ:「はい。そのかわり、その時はオルビスさん、貴方の本当の名前を教えてくれますね?」

オルビス:「そうだな。・・・あと、エリュオンにも言っておいてくれよ。『お前の明るい笑顔はきっと忘れない』と。」

一同:(爆笑)

エリュオン:もうだめだ。

オルビス:「村の人たちに言っておいてくれ。急な旅立ちで迷惑をかけて済まない、と。」そういって、マントを翻し、見たこともない服(自分の国の服)を着て旅立つ。

《ストーリー中、一人明るい役となったエリュオン、どうも明るく楽しく終わらせるしかないな、ということになる。》

マスター:エリュオンの結末、どうしましょうか?

キサナ:「じゃあエリュオン、仕事に行こうか!・・・どうしたの、眠そうな顔をして?」

女の子:「エリュオ〜ン。」

マスター:と、向こうから女の子が手を振って現れる。

エリュオン:「たはははは。」

キサナ:「けっ、やってらんないよなぁ〜。じゃあ、俺、先に行ってるよ。」(笑)

マスター:じゃあ、エリュオンはにこにこ笑って手弁当を持った女の子の前で、困ったような顔をしている、なんてのでよろしいんでしょうか・・・?

エリュオン:まぁそういうことにしておこう。

マスター:・・・ではこの辺で終わりにしましょう。





 それから一年が過ぎても、リィタは帰ってこなかった。

 ・・・たった一度だけ、

 キサナはリィタを感じたときがあった。

 社の森の小道を歩いていたとき、

 森の大木レクモディアの影に彼女はいた。

 彼女は軽く会釈をして、ひとこと、

 「ありがとう」

 と言ったようだった。

 キサナ、21才の頃のこと。

 恋人との結婚を迷っていた彼は、

 その日、結婚を決意した。



感想戦

前田(キサナ):主人公って疲れるわ。初めてやったよ、主人公って。

寿琅(マスター):これで主人公の苦しみが分かりましたね?

前田:分かった、分かった。私がマスターの時はもっといじめてやろう。(笑)

越中(セレーグ):あまりキャラクターにコンプレックスとか持たせるんじゃなかった。《辺境警備》(漫画)の隊長さんくらいに悟りきってるキャラだったらやりやすかったかもしれない。

前田:悪いけど俺、「木賊屋敷に猫がいた」と、聞いた時点でもうすでに、リィタは死んでて、ミャアが化けてるなというのは分かった。ただ、何で水死体が出たのかは分からなかったんや。

寿琅:リィタのことはあえて露骨に分かるようにしてたんですけどね。魚とか。(笑)分かったうえで、どうきれいに話を持ってゆくか、と。

越中:何で猫の化けてたリィタの方が幽霊より幼いのかな?

寿琅:そりゃ、本物のリィタが死んだのは一年前で、ミャアには五年前の姿の記憶しかないからですよ。

 ちなみに草履を川原に埋めたのは老夫婦です。

前田:そうでしょ。二択というのは二人のどっちかなっていう・・・。

寿琅:両方ですよ。

越中:あっ、そうなのか。

グローバル艦長(オルビス):越中の言ってた三択っていうのは、お爺さんが・お婆さんが・二人が一緒に埋めた、の三つじゃなかったのか?

 ・・私は四年間、猫のリィタしか見たことがなかったはずだから、あの鳶の丘での出来事もあまり不思議には思わなかっただろうな。彼女のことは普段から身軽な奴だと思ってただろうから。(笑)

越中:しかし、7メートル落下して途中でくるっと一回転するような身軽な女の子はいないよな。

かつまん(エリュオン):まあ、いないな。・・やはり、主人公と同じ立場で違う役をやるのは難しかったよ。行動しようにも情報がなかった。

寿琅:フリきれませんでした。申し訳ありません。

かつまん:PCがみんな影のある人で僕は36光年のかなたにおいていかれちゃったよ(笑)


あとがき

 いかがだったでしょうか。若気の至りとはいえハシリ過ぎた内容で、マスターとしての未熟さも相まって、先輩方に助けられた部分が少なからずでした。いやあ、あれからもう二年経つのか・・・。

   付け足しになりますが、その後の話について記しておきます。最後のキサナの結婚云々のくだりはプレイヤーの前田さんと話し合って決まったものです。あと老夫婦が真相を知っているので、なんとかなるだろうってんで誰もツッコミを入れませんでしたが、ミャアのその後については・・・猫の姿に戻るということはシナリオ中に決定していましたが、真相を知らない人から見るといきなり消えてしまうことになるリィタはどうなるのか?・・・きっと、老夫婦が、オルビスとともに旅立ったという事にしてしまったのでしょう。

   また、このシナリオの最終版では主役の少年向けに、以下のような幻影が川面に映るというイベントが追加されています。これは参考までに・・・。

1 萌黄の空。年老いた鳥は、今年初めて帰還した。幾度となく貴方の頭上を周回した後、森の古巣へ向かってゆく。・・・あとはただ、その森の千歳の緑が心を埋めてゆくのみであった。

2 無明。濡れた土のうえを裸足で歩くような音が。クチャァッ、クチャッ。残る足跡はまだ小さい。歩いているのは君なのか、それとも他の誰かなのか。いずれにせよ、それが非常に懐かしい人物であることだけは確かであった。

 「・・・暮れの烏羽、くるくるまわれ・・・」

 どこかから、わらべうたが聞こえてくる。それに伴うかのように、一枚の黒い羽根が、舞い上がり、どこか遠くへと飛んでいった・・・。

3 いやに湿度の高い部屋に少女はいた。衣装は美しいが、それはただだらしなく少女にかぶさっているだけのように見える。少女の伏せられがちな目を覗き込むと、漆黒の虹彩が遥か遠くを見つめていた。「漆黒の虹の彩り・・・」そのつまらぬ矛盾を気にしている間に、彼女はどこかへ行ってしまった。

4 ツメタイミズノナカ・・・。陸から来た魚は、翡翠となって空へはばたいてゆく。

 さて、これは一応F-Roadsのリプレイということになっていますが、見ていただいた通りあまりシステム面には触れられていません。しかし、Roads to Lord の世界であるユルセルーム世界の雰囲気は良く出ていると思います。このリプレイを読んで、一人でもユルセルーム世界に興味を持っていただけたとすれば幸いです。


 それでは、三つのストーリーを作り上げた、合計十一人の素晴らしいプレイヤーに多大なる感謝を捧げつつ。

寿琅啓吾(マスター/シナリオ・リプレイ作成)
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