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『貴方の「夏」は、どんな夏ですか?』
僕は自分以外の人間がそんな問いかけをしてくるとは、 まったく予想していませんでした。 それはまた、静かに雨の降る午後のことでした。 『この雨は、私が降らせているの。 私が、私の「夏」へ行くために。 息詰まるこの水の森の向こうにある、 あの白い「夏」へ。』 僕と同じように白い夏を見る彼女。 そこにあるものは、 全てを灼き尽くして無に帰す『白』と、 時を止める永遠のまどろみ。 涙は本当に悲しくて、 僕はただ頷いて、話を聞いてあげることしか出来ませんでした。 ひとしきり雨の降った後、 彼女は夏街を発って、家路につきました。 校舎の屋上に寝転がると、見えるもの全ては空となります。 こんな息苦しい日はいつも、 僕はそうして蒼穹の一部となり、 背中のコンクリの熱さから、世界の優しい干渉を感じるのです。 でも今日は、彼女が紅い小さな傘をさしていたのを思いだして、 まだそんなことの許される彼女のことを、 ちょっぴり羨ましく思ったりもするのでした。 |
かなり遅くなってしまいましたが、講談社の「amie」という雑誌に連載中の、『夏休みが待ち遠しい』(山名沢湖)について。 どうして彼女たちは僕の秘密を知っているのでしょうか。 それは、夏が訪れる前の「水」のお話。 そう、秘密はひとりじめするものじゃなくて、 秘密を教えあうことがまた、二人の秘密になるんですね。 上のお話は、僕の拙い感想文です。 |
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