白詰草のお姫様(2) 2001年10月,11月

四葉を寝かしつけるために,僕はお話をした.
文脈も意味も欠けた,わけの分からないことばかりだったけれど,
彼女はいつも,続きを聞かせて,と言ってくれた.


indexへ

名前について.kanon台詞マトリクスというのがあって衝撃を受けたんですが,僕は呼び方について日頃困惑することが多くて,未だに姉を呼ぶときどう呼べばいいか困るし,そのとき自分のことさえも僕やら私やら俺やらどう称せばいいか分からない.友達の「くん」「さん」付け,あるいは名前や名字の呼び捨てを選ぶのも難しくて,こっちはもう少し広く共有できますか.普段,さん付けで呼ぶけどノリで話すときは,あんた,とか混ぜてみて,後で少し恥ずかしくなったり落ち込んだりする.あるいは,とらハの綺堂さくらの話でもデートの時にそういうのがあって,見てて死にそうになりました.僕も一日頭をひねってマトリクスを決めてしまえば楽かもしれない.

天野,と呼ぶほうがどきどきするので,僕はそうすることが多いです.天野,という言葉が頭に浮かぶまでのゼロコンマ何秒かの間に,単位は分からないけど天野との距離が測られて,「天野さん」より近く「美汐」より遠く,ゆらゆらとした迷いの中に天野のことが感じられるように思います.

ONE, Kanonのなかで呼称が決められる過程はその結果ほど乱暴じゃなくて,呼び捨てになるにしても僕は好ましく思う.話が必ずしも恋愛でないためか,助平な距離に近づくにつれ呼称が名字から名前へ変わるという形でなく,距離が改めて測り直されている様子がある.「覚えてるよな、俺のこと」「…はい」「いや、まんま『はい』ってなぁ…先輩なんだから、『そう』とか『そうじゃない』とか…」上級生に丁寧語を使わないのは祐一の性質としても,舞を呼び捨てにして佐祐理さんをさん付けにするのは,わざわざ相手の先輩らしさを見て選んでいる.そもそも名前呼びになることについては,一番はじめに舞,舞,言うのは佐祐理さんで,流れとしては祐一もそれを真似してる節があるから聞いてて気にならなかったのだろう.人が言うのはわりと真似できる.他の誰かに許されいる呼び名は,自分もそう呼んでいいか?と尋ねるための心の敷居が低い.尋ねるまでもなく言える場合さえある.あと佐祐理さんは自分のほうから佐祐理と呼んでくれと言うのだけど,彼女,やはり呼称には不自由している人だから少しずれていて,そういうところも好きだ.

真琴からは沢渡家の匂いがしないから,沢渡さん,とか呼ぶのはどうも気味が悪い.子供だからという理由では繭にも当てはまるのだけど,繭のことはほとんど椎名って呼んでたような気がする.うろおぼえだけど.

天野,っていうのは特に名字以外で呼ぶ理由がなくて,これは長森とか七瀬もそうであって,無理に下の名前で呼ばないのは気持ちがいいです.いずれも恋愛対象という風じゃないし.ただ七瀬のことは最後くらい留美とか呼んで,乙女にしてやるくらいの甲斐性はあっていいんじゃないか.久弥さんのほうでは二人はいずれ恋愛してゆくので,そのときその呼称で呼ぶことが絵になるかどうかが問題にされる気がします.みさき先輩はみさき先輩だからみさき先輩なのだということをこれ以上説明できないんだけど(<これは誰かが言ってたように思う.),里村茜の話は呼称を変えるタイミングの測りかたが嫉妬すら覚えるほど上手だ.そんなにうまくできるかー,とか思う.が,機会があれば真似してみたい.(11/13)

「四葉は,もらわれっこだから.」

四葉のアルバムより.
泣いてしまった.

今月の四葉はえらく幼く見えたんだけど,先々月と比べて確認しても,顔つきが変わったということはなかった.あえて言うなら,彼女はいつ見ても違う服を着ているみたいなのに,これだけはお気に入りなのか去年のクリスマスと同じ赤いひらひらのブラウスを着ている.ただ今年はピンクのストールじゃなくて,ダークブラウンのフリルカーディガンを羽織っていた.こういう色はチョコの包み紙を思い出すのか,なんとも甘い味がする.格別の可愛さだ.

「クリスマスのインビテーション……やっと……やっと,兄チャマが四葉のこと……兄妹って認めてくれたんデスね.」

「"七五三"してないから,だから兄チャマはきっと四葉のこと,兄妹じゃないみたいに思って……」

去年のクリスマスと今月の七五三のときの話である.外国に居て離れ離れだったことはかなり気にしている.日本の季節の行事があるごとにそんな想像をさせているのは不憫だ.

「四葉と兄チャマはとっても仲良しの兄妹なんだけれど,ずぅーっと離ればなれで育ちました.」(だから今まで話をしたこともないのだけど.)「さて,兄チャマは四葉の兄チャマなわけデスが…四葉のことは,どう思ってマスか?」(兄チャマは四葉の兄チャマです.) 自明さと思い込みのはざまに在る,満たされない想いとともに,

「今は四葉は兄チャマのこと,全然知らないの…….でも,四葉,予感がするの! 絶対絶対,四葉のこと,一番わかってくれるのはきっと兄チャマだ,って…….」

ロンドンの空の下で,流れる雲を見送った.

今年,少し髪が伸びてウェーブがかってきた.そういうのを見ていると,もう女の子というより娘さんに近づいてきたような気がしていたのだけど,ちょっとふわふわの服を着るだけで子供みたいにみえて,それで,簡単に泣いてしまうのだ.独りのときは,もうこんな服を着せちゃいけない.

(2001/11/6,七五三には少し早い.前半については,G'sマガジン2001年1月号と同年10月,12月号を読み直してもらいたい.後半はキャラクターコレクションと,ゲーム版のお泊りインタビューあたりを.絵はざうすけ2 beta3とZaurus MI-E21で.ごめん,beta3からもう2年近く経った.)



もう二年前になるのか,これ読みましたかっ,と中将くんが(例の)嬉しそうな顔をして持ってきたのは,最終兵器彼女の連載第一回目だった(第一章・第二章同時掲載).あのときの中将くんの顔は昨日のことのように思い出せるのだけど,なんかその昨日と今日との一瞬の間ずっと,シュウジとちせは恋していた.僕はときどきよそ見をしてたから全部知らないけどきっと.

…ごめんなさい.
あたし英語
成績あんまりだから,

よく
わからないの…….

僕は少しは英語読めるからなんとなく分かるけど,逆にあの何語か知らぬ,ラテンみたいな言葉のほうは分からない.戦場でのちせのことは,ちせが意識を保てるようになってからようやく知れる.知れたけれど,意味まで分かったかどうかは,ちせも僕も分からない.僕も世界史選択だったけれど,もはやかけらも覚えていない.ちせは世界史が得意だったし,どこの国にどんな人がいるか,僕より知ってはいただろうけど.

知れること,分かることっていうのは限られていて,だからシュウジはいつだって,悔しかった.

他の漫画の話を持ち出すのは行儀悪いだろうか.高河ゆんの「約束の夏」を思い出すのは,例えばもう少し世界史勉強しておけば外国語勉強しておけば,あの地上に居たときのことを誇りをもって語ることができただろうかと,終末の果てに彼方の地で振り返るからで.

第一章が物語のサマリ.もっと早くこんな時間に気づいていれば,そしたら,そしたら,あたしたちは……終わらずに.だけど,これからぼくたちは,また始まる? いや,信じない,信じてる,アホ!かわいい死にたい生きたいクラスメート恋していく.ぐるぐると.終わって,また始まるという風ではなく,終わって,だけどそれはうやむやのままに物事は続いてゆく.だけど不器用と呼べるほど格好悪くもないから,これ以上なにか書くのは僕の気が進まない.

日記の名前は,この機会に変えました.パスタの国の王子様,あるいはPapa told meとかに.

"最終兵器彼女"(高橋しん)完結 10/31

綺堂さくらのもう一つの姿を知った瞬間,それはもう驚いたのと,あといたたまれなくなったのと両方だった.あんたはこんなに大きな話をずっとかかえこんできたのかと.

知ってる今になってあのときの彼女を思い出すと,それは肩の緊張がすっととけて,全てを置いてきたみたいに幸せそうな寝顔で,一人でかかえこまないそんな彼女を見れたことが,本当に良かったと思えるのだ.

"とらいあんぐるハート"(ivory) 10/17



10月と11月のlink
末永(式子),水姫(KID)
兄チャマ(「 『ぴたテン』4巻で美紗さんの裸みちゃったコタローくんがえらいことになるのはだから正しいし、一方では小学生はやはり世界と戦ってもいるわけです。むしろああいう年齢のときだけ世界はリアルに存在する。」「性が特権的であれる時期というのは限られていて、だからピュアメールが中学生なのはふさわしく思えるし、あとだからONEは18禁なんかにするより思春期にやっておくべきだ、という話を誰かがしていたように思うのだけれど。」)
筒井康隆のジュブナイルに高校生くらいの男女複数がセックスしまくる話があって,同じ高校生の頃にこういうの読んでたら忘れられないだろうなぁ,とか想像しながら読んだ.そんな風に気持ちを高校生に乗り移らせるような想像をしたせいか,僕までその青臭い印象を忘れられないでいる.昔,「エロゲー批評」のONEの欄にもじゃもじゃと書いたのを思い出したけどだいたいそういう背景で,僕にとってONEは憑依する感覚においてエロだった.H必要度なんて馬鹿げた評点を用意したのは,とらハとONEとLibido7について何か書きたかったというだけで.まぁそれはどうでもいいか.「なんというか、例えば小学生の目には中学生はじゅうぶんに大人びて見えたはずなので、そういう背丈のリアルを山田作品はあまり映し出していない。  『ぴたテン』4巻で美紗さんの裸みちゃったコタローくんがえらいことになるのはだから正しいし、一方では小学生はやはり世界と戦ってもいるわけです。むしろああいう年齢のときだけ世界はリアルに存在する。」 何度でも引用したくなる.僕が付け足すべき言葉はなにもないのであとは自分語りになるしかないんだけど,コタローくんが美紗さんの思考に手の届かない様は(例えば性のことなんか全く.),美紗さんの興味が羽根とか全く別の場所にあるために,余計にずっこけていて目を引くのがいい.美紗さんの裸を見て僕が混乱したとして,いや,仮定でなく現に混乱したんですが,その混乱がコタローくんと等しいものでないとは僕には想像できない.しばし憑依的であるとして気味悪がられるRPG者のなかでも,小学生として生き,世界と性とに混乱してみようなんていうのはRPG者内部でも避けられるもので,酒席の後に気心の知れた仲間とでもないと持ち出せないセッションだったというのは今思うと情けない.それにしても,一人ゲームや漫画にそういう態度で臨むにあたっては,なんの気後れがあるだろうか.
こばさん(ゲームとの対話)
ひらしょーさん(鈴凛のイデア)
高野さん( (; ),aoiさん(隠密),南さん(うっかり)
2.14さん("基本的に商売人だろうからなあ"(麻枝准評)) 泣いて笑って,ナニワのあきんど.
ソガ(四葉を育てている.)

四葉との暮らしぶり

profile
うたぎ75関西男坂東在住


なつかげめいきゅう ほしくさせんろ (c)1996-2001 曽我 十郎
e-mail: soga@summer.nifty.jp