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わっふる日誌
WaffleDiary


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この小さな世界の
頂上と谷間

1999年9月30日

川澄 舞

from
Kanon(KEY

この世で一番高い場所

Waffle's Note


例えば、はるか昔の思い出や
遠い未来の想像の中から、
新しい、輝くような力を見つけ出すこと。
それは、辻褄合わせの空想でなく
もっと創造的な発見で、
無意味とも思えるほど試行錯誤の迷路をたどる末に
めぐり合うかもしれない
自分自身の力であるということ。
この世にあまねく存在し
時さえも超えるその力のことを
俺は、奇跡、と呼ぶ。


本作は、Windows95,98用ゲーム「Kanon」((c)KEY)に贈る二次創作です。
佐祐理と舞の卒業を前にした、地上と屋上を巡る旅の遍歴は。





世界の狭間で



昼休みは、
校舎の階段を昇りつめたところ、
屋上へ続く扉の前の踊り場が
俺たちの教室だった。

机を寄せ合う代わりに
厚手のビニールシートを敷いて
弁当箱をつつく中、
冬の寒さに扉は閉ざされ
唯一、階下にある窓からの光は弱く
薄暗かったこの場所に、
佐祐理さんの笑顔がまぶしい。

「屋上のほうは人気がないんですよ。
 この学校にはきれいな中庭がありますから、
 みんなそっちへ行っちゃうんです。
 ですから、舞と佐祐理は
 ずっとこの場所にいました」

いつものように明るいままでそう言ったのは、
俺の問いに答えてのことだ。

今は誰も通らないこの場所だけれど、
春から短い夏をはさんで秋までの間
昼ご飯を一緒する学生たちで
屋上のにぎわった頃には
二人はいったいどこにいたのだろう?
何気ないつもりだったその問いを
胸の中で繰り返してみる。

舞の方に目をやると、
俺たちの話を聞いているのかいないのか
いつものように色気なく
黙々と箸を口に運んでいる。
そう、俺が来るようになるこの冬までの
今よりもっと騒々しさとは無縁の昼食時には、
つまり、
二人はいつだってこの場所にいたのだ。

けして屋上に踏み入ることなく
階段を下りてみることもなく、
この狭間のような場所こそが
いうならば洞窟の小口だったのだろう、と、
死の恐れをもって手を繋ぎ
深い地の底を欲した佐祐理さんと
出口の光を求めた舞の、
この雪の町で春の訪れより早く卒業する二人の、
そんな冒険に満ちた三年間を
俺は尊く思った。




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屋上の王国

1999年8月27日

月島 瑠璃子

from
雫(Leaf

灯を点す指先

Waffle's Note


これは、

瑠璃子さんと過ごした屋上の、

未来の日記。


本作は、PC-9801/Windows95,98用ゲーム「雫」((c)Leaf)に贈る二次創作です。
瑠璃子さんEND後の世界のショートストーリーで、少しだけ分岐があります。

1999年のもうひとつの夏の扉を開いてみませんか?





1999年の空の重い夏の朝に



始めに、家族と顔を合わせることができなくなった。

朝五時には家を出て、
ぬるい空気に息を詰め、
無人の校舎に吸い込まれるよう足を進める。

手をつけば冷やりとする壁の階段を昇りつめ、
軋む扉を押した向こうに広がる場所は、屋上。

少し湿ったコンクリートに身を投げ出して
明け方の浅い空が視界を覆うと、
それは、この学校の中に居て
学校の見えなくなる唯一の瞬間。
日常の中に居て、
日常を見なくて済む瞬間だった。

かけがえのない日常が
あまりに壊れやすいものと知ったから、
僕は見ていられなくなって、目を逸らしている。


そんな朝が三日ほど続いた頃から、
僕の隣りには瑠璃子さんが居た。
僕がこの時間、この屋上に居ることを、
話したことなんてなかったけれど。


空を見つめたまま手を伸ばすと、
瑠璃子さんの手に触れた。

ぎこちなく探り返してくるその指が、彼女の自然で、
今はもう、それだけが僕の安らぎだった。



そして僕は・・・







あとがきにかえて
(上のショートストーリー「屋上の王国」には続きがありますので、 もしよろしければ、選択肢をどちらかクリックして、 話の最後まで読み進めてから以下を読んで頂ければと思います。)



記念すべき21日目のわっふる日誌は、瑠璃子さんのお話。

あの日、
先輩から嬉々として古いPC-286をもらってきたのは、
当時、周囲で話題になっていた
電波のゲームをするためでした。

それは、なによりもまず屋上の出来事が衝撃で、
学校の屋上に現われる瑠璃子さんの確信を持った語りは、
私の中のファンタジーにぴったりと重なって、
抒情的なメロディと一緒に、
彼女を忘れえぬ存在にしたのでした。

初めてプレイしたノベル系のゲームが
雫だったのはとても幸せで、
それで18禁レーべルで発売される
自由な発想のゲームの面白さを知った私は、
だからこそ、
今、例えばWhiteAlbumやKanonをプレイすることもできるのだと思います。

ここまで読んで頂いた皆様、ならびに、
私がPCで物語の冒険を始めるきっかけを与えてくれた、
Leafの皆様に深く感謝致します。





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夏町 銅貨
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