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わっふる・わんだーらんど
waffle wonderland





『イチゴとあずきのワッフル』 v.s. 『星は、昴』

1999/3/2



「ふー、一服一服。しかし、この街もしばらく見ないうちに変わったものだねぇ、茜ちゃん」

アバンティーから祇園祭のおっきな鉾が消えちゃいましたしね。

「そう。それに神戸屋のおねーさんの笑顔をいつでも見ることが出来るようになっただなんて、これほど幸せなことがあるかい・・・(しばし感慨にふける)」

(この隙に)えっと、今わたしたちは京都駅から歩いて三分、烏丸七条交差点にあるUCC カフェプラザに来ています。カウンターにコポコポ音を立てて並ぶコーヒーメーカーの列が壮観ですね〜。10コはあるでしょうか。

「誰に説明しておるんだね。まぁ、ともかくオーダーを決めなくてはな」

夏町さん、この前はチョコレートワッフルでしたよね。

「うむ。時間が時間だったのでモーニングのメニューを渡されたのを、わざわざ普段のメニューにもらい直したのだった」

とっても変な目で見られてましたけど・・・。

「他に時間がとれなかったのだから仕方ないではないか。ともかく今日は季節のワッフルということで、イチゴとあずきのワッフルにするのだ」

ショーウィンドーのがおいしそ〜でしたね。

「で、待ちながら、さっきアバンティーブックセンターで買ってきた本をおもむろに開くのであった」

わたしにも見せてー。なになに、谷甲州の『星は、昴』? SFなんて珍しいですね。

「たしかに最近読んでなかったな。でも掲示板でsugichさんのお薦めがあったし、題名もまた良いから」

枕草子?

「うむ。こういう日本らしい表現の出てくるところが、私が日本の作家の好きな理由だな」

ねぇねぇ、早く読みましょうよ〜。

「おっと、そんなことを考えているうちにワッフルが出てきてしまった」

お皿にまるくておっきなワッフルが一枚、でーん、とのってます。その上にはイチゴにあずき、生クリームにアイスがたっぷり。ナイフで切りながら、お気に入りのトッピングを付けわけて食べられます。

「あ〜、この焼き立てのサクサク感がたまらんのだよ」

わたしも食べます〜。

「ここから半分が僕ので、残りの半分が茜ちゃんのだ」

あ〜っ、こっちにはアイスしかないよう。

「アイスは溶けるからすぐ食べるように」

しくしく。

「さて、その間に続きを読むとするか」

・・・

どうでした?

「星の光はせつないね。
舞台は地球から数千光年離れた宙域にある二つの観測基地だから、どちらも地球から見たならば小さな星にすら見えないはずだ」

うん。

「基地にはそれぞれ研究員が一人ずついて、彼らはこの宙域で通信を交わしてはじめて友人になったんだ。けれどもこの基地同士も37光日離れている」

じゃあ、返事は絶対二ヶ月以上遅れちゃうわけですね。

「そう。だからそれは限りなく孤独に近いパイオニアワークなんだけど、そんな特別の中にも普通の友情や研究者としてのおごり、尊敬がある。だから、お互いのことを友であり、星であるような目で見るようになるし、僕もまた、彼ら二人を星の中に見ることが出来る。」

星であるような目で見るって?

「星にはけして手に届かぬがゆえの気高さがあると思う。それは自分とは距離をおいておきたい美しさだ。それを敬い、目標にしたいと思っても、自分のすぐ側にあってほしくはない。語り手の寺沢博士にしても、彼にとっての星はすぐ側の、といっても5000億キロ向こうだけど、この話の中のどんなスケールと比べても近いところにある恒星LT-569-δじゃなかった」

じゃあ、人はけして星と触れあうことはできないんですか。

「いや、触れることはなくても、重なる瞬間はあると思うよ。星の光の通り過ぎるのを感じた時、残される大きな想いがその証拠になるんじゃないかな。例えば、僕にとってはこの本を読んだときがそうだ」

・・・

おいしかったですね。

「うむ。まぁ、イチゴはあまり好きというわけではないから、全部食べてくれても良かったのだが」

結局、食べてくれっていうだもん。せっかく季節のものなんだから、全部食べなきゃダメですよ。

「まぁ、なんというか気分だけ初春らしく、というか」

では、ごちそうさまでした〜。




uccカフェプラザ京都駅前店にて
  • イチゴとあずきのわっふる+カフェオレ(900円)
  • 「星は、昴」(谷甲州、早川書房、630円)

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夏町 銅貨
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