waffle wAnderland
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(c)Douca Natsumachi


生まれた時に持たされたはずの幸運の葉は、強く握りすぎてくしゃくしゃになってしまった。

生まれた時に持たされたはずの幸運の葉は、強く握りすぎてくしゃくしゃになってしまった。
行ってきます、とあの日あなたに告げたとき、
あなたがそっと握らせてくれた幸運は、
いつだって、このてのひらの中にあります。

忘れっぽいあなたのために、名前に付けてあげたのよ、って。
でも、四葉っていうのは四葉が生まれる前に付けたんだから、
そのときには四葉が忘れっぽいだなんて、まだ誰にも分からなかったよね。

わたしはお兄ちゃんに手渡された幸運でありたい、なんていうから、
四葉にお兄ちゃんなんて呼ばれると、恋人みたいでなんだか照れる、
とそっぽを向いたら、足をふまれた。

行ってきます。生まれたその日に手渡された幸運の葉がしおれても、
ひらけば魔法のようになんだって出てくる君の手を
むすんで一緒に歩いてゆく今、
それは図書館の本にはさまった押し花が
ときどきするような不思議の旅で、
行ってきます、という他の誰かのために優しくありたいと思えるのは、
旅の行く先では少しやさしくなれたりするのと同じことなのかもしれない。

君となら、いつだって異邦人でいていいと思える。
(2001/9/10)