R.S.T. (2)  6 years
曽我 十郎




ふうちゃん

確かに,夏はもう終わってしまっていたのかもしれないけれど,彼女らとの思い出は夏休みのことばかりで,さもなくば,裏山の水辺で遊んだことをわずかに覚えているだけで,それはあまりにも夏らしかった.いま私は夏休みだからこそこんなにも時間をもてあましているというのに,彼女らはなぜだか学校や職場へ出かけていて私と違う時間を生きている.秋なのに自分だけが夏休みだなんて認めたくない.大学生だから秋も休みなんだという勝手は別に私のせいではない,時がそうさせたのであって,彼女らと会う季節は本来夏であるべきだった.それはけして,秋なんかであってはならない.

だから,変な夢を見る.怖い,夢を見たのだ.

たとえば,楓ちゃんのことを,ふうちゃん,なんて呼んでみたり,楓ちゃんの方は僕のことを,耕一兄さん,と呼んでくれたり.この6年間はそうしたことがいちいち気恥ずかしいという日々が続いていて,彼女は今年で22歳になって,僕は27歳で未だに大学生をやっている.僕は,そうだったらいいと思う.(2002/8/20)

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