流星 


向日葵の空元気は過ぎ去って
冷たい雨に濡れた落ち葉の道。
風景の移り変わりはいつも
僕らに季節を告げるけれど
夜空はそんな約束など素知らぬ顔で
秋にオリオンを映し出す。

午前四時。
ペガススの走り終えた空に
姿を並べる冬の星座は
夜明け前の宇宙の秘密。

夜行性の人間たちの
心はいつも
次の季節を待っていて
今夜もまた、眠れない。


秋の流れ星は豊穣。
豊かな季節を見つめながら
地に落ちた彼らは
その記憶を冬の土に凍らせ
春、溶け出すときに
緑の芽吹きへと伝える。

流星への祈りは、
凍える季節の向こうにある
希望のための祈り。


冬の深夜過ぎにはもう
春の星座が昇るだろうと思いながら
ある秋の夜空に見た
流れる光の一筋。

如何にも空々しい流星群しか見たことのない僕にとって
望みすぎた故の幻だったかも知れないと
その初めての目撃を素直に受け入れることのできないのは
夢を見ても
必ず叶うと信じ切れていないからだろうか。

けれども、夜空に起こり続ける奇跡はとても綺麗で
いつも僕に夢を見せ続ける。

夢見る人はきっと
それぞれそんな秘密を抱えながら
この世界を歩いているのだろう。

だとすると
夢を見ることこそが
世界の秘密に通じることなのかもしれない。

そして、世界の秘密は
自分自身の秘密でもある。


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寿琅啓吾 <soga@summer.nifty.jp>