Chapter 3.
「風猫といっても、空は飛べないのですよ。Scene11. 天文台跡 そして夜の十時になりました。 魔女と猫達は約束の遺跡へ向かいます。 シン:「飛ぼうか。」 クアリ:「ほうきで飛んでいったほうが気持ち良さそうですね。」 エリー:「きっと下を見るとまるで夜空を見るようになるニャア。」 シルバス:「ご主人、今度は成功すると思うミャア。」 シン:「そらバッチリよ!それっ。」
ほうきに乗った少女と猫の影が二つ、
シン:頭がぴかぴかしているのね。 マスター:ええ。あの夜に魔女猫たちが見たような姿です。でもそれぞれ微妙に星の色が違います。 シン:眼・鼻・口はありますか?
マスター:ありません。 シン:輪の真ん中に降りる! クアリ:あたし、脇に降ります・・・。 シン:「え、クアリもこっちに降りようよ!」とクアリをひっぱって・・・。 クアリ:じゃあ、あたしは引きずられてそっちへ(笑)
エリー:「ご主人様、意志弱いニャア。」 マスター:では、その6人の中の、薄いピンクがかった星の人が立ち上がって、こう言います。 コーラル:「私はコーラル。あちらから順にルビィ、碧瑠璃、サファイア、雲母、そしてシリカ。」 シン:「こんにちは。わたしはリウィット・シン。えっと、魔女です。こっちが魔女猫のシルバス。」 クアリ:「同じく魔女の、クアリ=レファ=ナジムと申します。」 シルバス:「こいつらは人間なんでしょうかミャア。」 コーラル:「人間ではありません。私たちはあの夜空から来た、すなわち、あなた方のいうところの『星』です。」
|
シン:「ねぇ、一つ質問していいですか?全然関係ない質問なんだけど、その格好で眼が見えてるの?」 コーラル:「(微笑)そうでなければあなた方とこうしてうまく話すことはできませんよ。」 シン:「そうだよね、不思議だなぁ・・・。」 クアリ:「眼だけでものが見えるわけではないでしょう。」 コーラル:「星の光は全てを見通すのです。・・・さて、本題に入りましょうか。我々はこの年、200年ぶりにこの街に降り立ちました。しかし、その途中に私の息子のアクアがどこかへ隠れてしまったのです。」 クアリ:「『アクアマリン』の『アクア』なのね。」 コーラル:「・・・アクアは、ついこの前、姉のフルオ・・・いえ、分かり易いように『蛍』ともうしましょうか?彼女を亡くしたのです。そのせいかと思って、はじめはそっとしておいてやりました。じきに戻ってくるだろうと思いまして。でもアクアはまだ戻ってきていません。・・・あまり長くになると、何か街に迷惑がかかるかもしれないし、現に迷惑をかけているとなるとなおさらです。それで、探そうとしているのですが。」
シン:「あの子はお姉さんを捜していたみたいだよ。」 コーラル:「そうですか、『蛍』を。『蛍』を失ったことが我々の想像以上に辛かったのですね。 ・・ほたる・・・『蛍』は、青紫から青、そして白へ変わる光もつ、それは美しい子でした・・・。」
シン:「・・・そんな花があったよね コーラル:「なにかあなた方は心当たりがあるのですか?」 シン:「『蛍』さんのように色の変わる花があるところをわたしは知っているんだけども。」 コーラル:「それは・・・面白いですね。アクアはそれを捜しているのですか?」 シルバス:「その可能性は大ですミャア。」
コーラル:「そういえば『星洋燈』とお聞きしましたが、アクアはそれをとっていったのですか?」 シン:「ええ。」 コーラル:「星洋燈・・・・アクアはあんなもので願いを叶えようと・・・。」 シン:「あんなものって、そんな・・・。」 コーラル:「いや、星洋燈の灯の由来をお話ししましょうか。・・・古来より、星に願いを託すものは絶えませんでした。太古におけるわれら星との契約にもとづいて、人間の星魔法は行使されています。星祭りの間のみ、人の手による星たる《星洋燈の灯》は地上に留まることを許されて、人の願いを仮託されるのです。 ただ、昔ならいざ知らず、今の人間達の使う星魔法では願いを叶えることなど出来ないのです。」 クアリ:「いまの人間では星魔法が使えないというのは星魔法使いの問題なのですか?それとも星魔法に託する『願い』の問題なのですか?」 コーラル:「もうすでに人間達は、そんな強力な星魔法を行使できるだけの力を失っている。だから、星魔法の力によって願いを叶えることはできないのです。」 シン:「でも・・・でも、信じる人もいるけど・・・。」 コーラル:「我々は、そこが人間達の素晴らしいところだと思っていますよ。」
シン:「そうだよね。それに100%頼るんじゃなくて、ね、 コーラル:「・・・・・もしかしたらあなた方こそが、アクアを説得するにふさわしいのかもしれませんね。 ・・・アクアのことはあなた方にお任せできませんか。」 シン:「アクアちゃんを見つけろということ?う〜ん大変そう。」 シルバス:「とりあえず何とかなりますミャア。」 クアリ:「分かりました。あたしたちもとりあえず努力してみます。」 エリー:「アクア君を捜すニャア。」
クアリ:「とりあえず明日の朝、グレイスさんにサーム・シーの花を一株分けてもらいませんか?」
|
Scene12. 魔法
翌日、魔女と猫たちはグレイスさんの庭に向かいます。 マスター:グレイスさんは庭で花に水やりをしています。 シン:「グレイスさん、おはようございます。」 グレイス:「おはよう!どうしたの、こんな早くに?」 エリー:「じつは・・・。」といっても「ニャア、ニャア」としか聞こえないんだった(笑)
クアリ:「じつは、サーム・シーの花をどうしてもほしいって子がいるんです。」 グレイス:「サーム・シー・・・。私の国ではイエスタデイ・トゥデイ・トゥモロウというの。訳すと、昨日・今日・明日という意味。こんな花にだって、昔や、今や、そして未来があるのよね・・・そう思うと、私は未来を信じることが出来るわ。この花はもともと、あそこの水運展覧館からもらってきたの。」 クアリ:「水運展覧館?」 グレイス:「ええ、展覧館のサーム・シーはすごく有名なのよ。まだ見ていなかった?」 クアリ:「初めて聞きました。」 グレイス:「うちのは・・・もう駄目だけど、あそこだったら、まだ花の開いてないサーム・シーがあるかもしれないわ。」 シン:「そうですか、分かりました。」 クアリ:「そっちへいってみよう。」
魔女と猫たちは、ほうきで空を飛んで水運展覧館へ向かいます。
シン:「ああ・・・すごかったね。」プレイヤーが個人的にこんなの好きだなぁ。 マスター:庭の入り口ではのっそりしたバナナの木が迎えてくれます。その奥には、この前市場で見た以上の数の蘭の花が一面に広がっています。 そして、左手には、白や薄青の可憐な花が、川をつくっています。花は、サーム・シー。もし時間を早送りする事が出来るのならば、その色の変わってゆく様は、本当に川が流れるように見えるかもしれません。
・・・その花の川のかたわらに、あの子がいます。クーランの星洋燈を抱くようにうずくまって、じっとサーム・シーの花を見つめています。
|
クアリ:「・・・アクアくん?」
マスター:あなた方に気づくと、彼はシンの目をじっと見つめます。さみしそうな感じですね。 シン:「お姉ちゃん見つかった?」 マスター:彼は首を振って、哀しそうな目でサーム・シーを見ながらこういいます。 アクア:「僕はこの星洋燈で『蛍』を生き返らせるんだ。」 シン:「・・・どうやって・・・どうやって?」 アクア:「これは願いを叶えることが出来るんだろう?確かあの男の子がそう言っていたよ。」 クアリ:「その洋燈に込められた願いはあの男の子、クーラン君の願いなの。あなたのお姉さんを生き返らしたいっていう願いとは違う願いが込められているの、その光には。」 アクア:「この星洋燈では僕の願いは叶わないの?」 シン:「うん・・たぶん、無理。・・・う〜ん、だからさ、その男の子に返しにいかない?」 アクア:「じゃあ、僕の願いはどうやったら叶うの?」 シン:「あなたが一生懸命願ったら。かなわないかもしれないけど、いつかかなうかもしれない。」 エリー:「・・・あの子にも星洋燈あげられないかニャア。」 クアリ:エリーのほうを向いて首を振って、 「サーム・シーの花の色の青紫・青・白はそれぞれ昨日・今日・明日つまり、過去・現在・未来をあらわしているの。 変わった花の色はもう元には戻らない。お姉さんはもう、あなたの過去の中に生きているの。もう、けしてあとに戻ることはないの。あなたはこれから残されてる未来に向かって生きなければならないと思うけど・・・。 いつまでも、変わってしまった青紫の色を願うことはできないはずよ。」 マスター:彼は、また哀しそうにサーム・シーの花のほうを見ます。そして、右手に持っていた星洋燈をあなた方に返します。 と、その時、アクアの後ろにコーラルがすぅーっと現れます。
コーラル:「アクア、いずれにせよこの星洋燈の魔法では願いを叶えることは出来ないんだよ。」 アクア:「・・・じゃあ、何で人間達はなんの力もない洋燈に祈りを託すのさ?それでまた何で願いを叶えることが出来るのさ?」 シン:「それは・・・頑張るから。・・・お願いすればお姉さんに会えるかもしれないと、とわたしがいったのはね・・・クアリのいったことも本当なの。でも会えることもあるとわたしは思っているの。この花を見たらお姉さんを思い出すように。 ・・・願いって、そうしたいと思って頑張ること。」 クアリ:「人はね、けして強い生き物じゃないから、時にはくじけてめげてしまうこともあるわ。でも、だからこそ、願いや未来や夢を信じたいの。そして、信じることが、自分自身を願いに近づける力にすることができるの。」 アクア:「じゃあ星洋燈っていうのは一体何?」 シン:「どんなに暗いときでも向こうに明かりがあったらがんばれるって誰かがいってた。」 クアリ:「洋燈の光はいわばその先の見えない未来を照らす自分を信じるあかしみたいなものなの。」 アクア:「・・・そうか。」 マスター:アクアの表情が少しやわらかくなります。 コーラル:「・・・私が見るに、本当の星魔法使いには、ひょっとしたら洋燈さえも必要ないのかもしれないね。 ・・・そうだね、お礼にこの洋燈に、今日の真夜中までしか効果がないけど魔法をかけたよ。真の星魔法使いならば、その力を使うことが出来るだろう。」 シン:「コーラルさん達はこれから帰るんですか。」 コーラル:「そうだよ。少しだけ用事があるけれど。」 シン:「じゃあ、これ、クーランに渡しにいこう。」
クアリ:「ええ。」 マスター:クーランは広場にいました。 クーラン:「あれ、僕の洋燈だ。どこで見つけたの?」 シン:「へっへっへっへ、秘密。」 クーラン:「あれから君がいってたこと少し考えてたんだけど・・・。」 シン:「あ、ごめんね。わたし莫迦だからあまりうまくいえなかったけれど・・・。」 クーラン:「星洋燈に頼るだけじゃ駄目って、それはもしかして僕の課題の答えにも関係があるの?」 シン:「うん・・・そうだよね。クーランに一つ聞きたいんだけど、星洋燈を使った魔法で本当に願いはかなうと思う?」 クーラン:「本当に魔法が力を持ってるのかってこと?」 シン:「うん。」 クーラン:「・・・・・・。」 クアリ:「クーラン、あたし昨日ね、ユインさんって方に会ったの。彼女ね、ずうっと夢見てた留学するってことが決まっておおはしゃぎしてたの。でも彼女はね、星魔法は信じてないっていってた。昔は信じてたけど、今はもう洋燈も掲げずに。でも彼女はね、自分の力で努力して留学することができたの。もしかしたらそれも星魔法の一つかもしれない。」 クーラン:「・・・なんだか少し分かってきたかもしれない。・・・夜にまたここで会おうよ。その時には課題の答えが見つかっているかもしれない。」 クアリ:「ええ。クーランならきっとその答えが見つかるわよ。」といって洋燈を返しましょう。 クーラン:「ありがとう。じゃあ。」 マスター:そういって、クーランは去って行きます。
|