Topic : F-Roadsにおける感情と魔法の関係



 The Roads to the Lord、 Beyond-Roads to Lord に続くシリーズ三作目のF-Roadsでは魔法と術者の感情との関わりを密にすることが提案されました。この記事では第1回で行ったユルセルームの魔法観に関する論考にF-Roads的「感情」の要素を追加します。

1章.魔法の発動プロセス
2章.魔法の発動と術者の感情
3章.激情・無情状態と魔法


1章.魔法の発動プロセス

 ユルセルーム世界の魔法とはいかなるプロセスで発動するのでしょうか。
その大まかな流れをこの章では解説します。

1.氈D「感情値」と「心性」の「突起」
心性の突起  感情の起伏が全くない「心性」があるとすれば、それは粘土でたとえると表面に波さえ立たぬなめらかな塊(基底状態)です。しかし、感情が高ぶることにより、それは表面に無数の「突起」のある塊(励起状態)に変わります。
この「突起」こそが魔法の発動には欠かせないものであるのです。
《ルール的に、感情の高まりは「感情値」の上昇であらわされています。》

1..「心性」によるソース・イメージの保持
 「心性」が「世界」と繋がった際に、「世界」を循環するソースやイメージはこの「突起」に引っかかってしまうことがあります。引っかかったソース・イメージは「心性」によって保持された状態になり、一方「心性」はその引っかかりの刺激でさらに「突起」を増やす(より高いエネルギー状態になる>>高エネルギー励起状態)ことになります。
《ルール的に、夢を見ることで「感情値」が上がるのはこのためです。》

1.。.ソース・イメージの解放と魔法の発動
 「心性」の「突起」が揺り動かされたときに、保持されていたソースやイメージのいくつかは解放されます。こうしてまとめて「解放」されたソース・イメージはパワーソースに象徴される九つの力を操って、ユルセルーム世界に影響を及ぼします・・・・これが「魔法」です。

 それでは一体いかなる時にその「突起」は揺り動かされるのでしょうか?その話は2章の方に譲ることにします。



2章.魔法の発動と術者の感情

 感情の動きと魔法の発動とは密接なつながりを持っています。この章では魔法発動の契機について解説します。

2.氈D感情抑制の代償行為としてのソース・イメージの解放
 感情というものは普段ある程度は理性によって抑えられているものです。ただ、感情が高まってくると(「心性」が高エネルギー状態になると)その抑制が全く利かなくなるような場合もあります。
イメージソースの解放  しかし、ユルセルームの者はそれを回避するために「ソース・イメージの解放(魔法の発動)」を「素の感情の爆発」の代償行為とすることができるのです。この代償行為は無意識のうちに行われて「心性」の「突起」を揺り動かします。その際に保持されていたソースやイメージは「突起」から解放され、感情の高まりがおさまります。(「心性」のエネルギー状態が下がる>>低エネルギー励起状態

 このように、ユルセルームの生物にとって、魔法とは生理現象に等しいと言えます。

2..「魔法使い」について
 代償行為としての無意識の魔法と異なり、自分の意志で自在に「突起」を揺り動かすことのできるものを「魔法使い」と呼びます。「薄暗がりの時代」から「大旗戦争の時代」にかけて「魔法使い」はほとんど存在していません。
 ただ、ユルセルームのものは一般に「自在に」とはいわないまでもある程度その「突起」を操ることができます。

2.。.魔法の効果と感情の関係
 種々の感情と無数の「突起」とは一対一の対応関係にあります。よって2.氈Dではソースやイメージを解放した「突起」に対応する感情の高まりがおさまることになります。
 「魔法使い」ならば任意の「突起」を揺り動かして任意の「ソース・イメージ」を解放することにより自在に魔法の効果を決めることができます。
《ルール的に、感情の高まりがおさまれば10個の感情値のうちどれかが下がることになります。》



3章.激情・無情状態と魔法

 この章では感情の特別な状態である「激情状態」「無情状態」と魔法との関係について解説します。

3.氈D激情状態とは
 感情が急激に高ぶると、代償行為が追いつかなくなって「素の感情の爆発」が起こります。これを「激情状態」と呼びます。「激情状態」になるとまず、感情を抑えきれなくなります。そして、その感情に対応する「突起」の保持していたソースやイメージは同時に解放されます。無論それは魔法を発動したことになりますが、ここでその対象は自分自身となります。「激情状態」にあるものはその魔法の効果により、何かに憑かれたような行動をとりはじめます。

3..無情状態とは
 ある一種の感情のみが「突起」を失った状態を「無情状態」といいます。「突起」がなくなるとそれまでその突起が保持していたソースやイメージは「世界」へ流されてしまいます。(これは魔法としての解放ではありません。)このとき、突起からひき剥がされていきなり不安定になったソースやイメージは別の「突起」が安定して保持しているソース・イメージも巻き添えにして流すこともあります。
《ルール的に、「霊縁カード」を失うことになります。「無名の感情」の無情状態に関しては理由不明です。》

3.。.幽魔族と魔法
 感情の起伏が全くない、すなわち「心性」が基底状態の時を「真の無情状態」といいます。これは感情を全て喪失した幽魔族しか持ち得ない状態です。幽魔族は感情以外の手段で「心性」を励起させ「突起」を創ることで魔法を使います。その手段とは祭祀によるものがほとんどです。《「ユルセルーム博物誌」(遊演体)を参照》



4.最後に

 B-RoadsとF-Roadsのルールはいくつものコンポーネントの組み合わせが自在であることが悪くいえば煩雑で統一感にかけるように見えます。しかし、注意深く読み解けば、シリーズを通して魔法を軸とした一本の筋が見えてきます。それを公式に示さないことが発祥の古い当シリーズの美点であり、欠点でもあるでしょう。
 それではこのへんで。
 
『大旗よ、誇り高く翻れ!』


初出 京都大学RPG研究会会誌"FANATIC WORKS"第参号
夜光性歌劇へ
短冊懸へ