Topic : ユルセルーム世界の成り立ち
魔法・魔法使いに関する考察


 Roads to Lordシリーズもこのたび発売されたFar Roads to Lordで三作目です。このシリーズは新しくなる度に魔法のシステムを変えていることで有名ですが、Farに掲載された解説でユルセルームの魔法観が幾分まとまったように思います。ただ、Farの魔法自体はFar のコンセプトであると思われる「ストーリー作成支援システムとしてのルール」に基づいており、ユルセルームの魔法のある一面のみを表しているにすぎません。幸いRoadsシリーズは各人の自由な発想によるルールの適用、改編、または世界観の決定が認められており「十人いれば十通りのユルセルーム」がありますから、遊演体が発表した設定に大部分わたしなりの解釈を加えて説明してゆきたいと思います。
 それでは、はじめにまとめてしまってから順次解説をしてゆきます。

・ユルセルーム世界の成り立ち
 はじめに「至上神ハヴァエル」とハヴァエルの用意した混じりあう九つの「源初の存在(エス・レ)」のみがあった。ハヴァエルは源初の存在に「波(エレ・ネア)」を起こし、波のうねりは七つの源初の存在を含んだ「世界」となった。また、その波間に「ユルセルーム」があらわれた。
 波の立てた最初の音は「世界」を循環するパワーソースに偏りをもたらし、七つの源初の存在が七柱の巨大な「心性」である「スィーラ」に分化(覚醒)するのををうながした。また、「世界」にならなかった二つの源初の存在は「太古(混沌)の存在」となった。ここで分化しなかった「世界」の残りは「スィーラ」の導きによって順次細かな「心性」へと分化してゆく。それに伴って「ユルセルーム」もいくつもの「体性」へと分化していった。

・パワーソース・マジックイメージ
 ハヴァエルがユルセルーム世界の九つの力を操るためにばらまいたシンボルを指す。自身の力のシンボルである「無色」と太古の力のシンボルである「混じりあうすべての色」を含めて、「世界」のなかを循環させている。以下「ソース」「イメージ」というように省略して書く。

・魔法とは
 「世界」を循環するソースやイメージを自らの「心性」に保持して、まとめて解放することである。

                 魔法とは

以下、解説の章


0章.ユルセルーム世界の成り立ち
1章.魔法の発動プロセス
2章.魔法の発動と術者の感情
3章.魔法使い


0章.ユルセルーム世界の成り立ち

 魔法とユルセルーム世界とは深くかかわり合っているので、魔法の解説をする前にユルセルーム世界の成り立ちから説明を始めなくてはなりません。

0.a. ユルセルーム世界の誕生

 はじめに「源初の存在(エス・レ)」と呼ばれるものが至上神ハヴァエルを中心になかば混じりあい、かつとりまきながら、夢見つつ漠然とまどろんでいました。ハヴァエルはやがて、すべての源である「波(エレ・ネア)」を顕しました。そしてその波の狭間にユルセルームの地が誕生しました。
 波の立てた最初の音は、エス・レから七柱の「スィーラ」を覚醒させます。そしてスィーラたちはユルセルームに降臨し、夜と夢、言葉と物語、旋律と色彩、変容と形、始まりと終わりなどをもたらしました。

0.b. ユルセルーム世界を構成する物質と力

 ユルセルーム世界の物質はみな「体性」と「心性」という力を持っています。ただし「体性」はかなり分化が進んでいて力というよりはむしろ物質の構成・形そのものを指しています。(なかには三千と一つの島々出身の魔法使いのように「体性」が未分化のまま「力」の状態を維持しているものもありますが。なお「分化」とはどういう意味であるかについては2.a項を参照してください。)
 「心性」はその物質の心霊力、精神力、知力などをあらわし「体性」ほど分化はしていません。(心霊力や精神力などという未定義の言葉を便宜上使うことをお許しください。)そして「体性」と「心性」とが密接にかかわり合って物質は成り立っているのです。ただし、いわゆる人工物(アーティクル)は「心性」が弱く、動物は強いといった差異はあります。《その他の自然界のもの(植物・鉱物)の「心性」の強さはその中間といったところでしょう。》
 また「天界」「地界」「霊界」と呼ばれるところ(この三界がいったいどういうものなのかは全く明らかにされていませんし、私流の解釈もいたしません。)には特筆すべき心性力が存在し、ユルセルームの物質に大きな影響を与えています。
 このほか「地」「水」「火」「風」といった自然界の力があります。この力もやはり、ユルセルームの物質に大きな影響を与えています。「混沌の力」「大いなる運命の力」の二つの力については確かなことは分かっていません。
 ユルセルーム世界にあふれている力は「スィーラ」と呼ばれる七柱の神と二柱の「存在」、そして至上神ハヴァエルにもとづいています。七柱のスィーラがそれぞれ「天界」「地界」「霊界」の心性力と四つの自然界の力の源で、残りの二柱の「存在」は「混沌の力」、ハヴァエルは「大いなる運命の力」の源となっています。

1章.ユルセルームの魔法の構成

 魔法とはいったい何であるのかを述べる前に、用語的問題を解決してしまいます。簡潔にまとめると、ふつう魔法は「ソース」+「イメージ」+「感情」+「目標」の四つの要素で構成されると考えられています。

1.a. ソース(魔力源)

 ユルセルームで使われる魔法の力の源は「天界」「地界」「霊界」の心性力と四つの自然界の力、そして「混沌の力」と「大いなる運命の力」の九つであり、それらの力を魔力源(ソース)と呼びます。また、ソースはそれぞれ九つの「真の色彩」と呼ばれるものに対応しており、物質の心性(わかりやすくいえば、特に人間の精神のこと)はソースを色として知覚します。対応関係については上の図をご覧ください。

1.b. イメージ

 魔法をクッキーにたとえた場合、ソースはクッキーの生地をあらわし、イメージはそれを様々な形に抜き取る型や、生地に混ぜ込むフルーツに相当します。イメージに修飾されてはじめて魔法は確実な意味を持ちます。無論クッキーの生地をそのまま食べることができないわけではないのと同じで、イメージがなくとも「魔法」と呼ばれる現象は起こり得ます。(ただし、なにが起こるかは全く分かりません。)
 物質の心性はイメージを様々な「形」として知覚します。その「形」にはある程度法則性があり、どの心性にも同じイメージはだいたい同じような「形」として知覚されるので、これらはユルセルームの隠された象徴だと思われています。(へリアの賢者などの研究による。)

1.c. 感情

 魔法を使う際の術者の感情です。さっきのクッキーの例でいうと、これはクッキーの焼き加減に相当します。感情によっても魔法の効果は大きく左右されるということが広く認められています。具体的には魔法の威力を左右します。その感情によって、有利になる魔法と不利になる魔法との対応については《表3》をご覧ください。

1.d. 目標

 魔法を適用する対象のことです。クッキーの例でいうと、クッキーを食べる人に相当しますね。

2章.ユルセルームの魔法の理

 やっと本題にはいれました。そもそも、ユルセルームにおける「魔法」とはいったい何なのでしょうか? 一言でいうと「世界という器の外にある、もう一回り大きな器のなかの力を利用すること」であるらしいのですが、これではよく分かりませんね?「もう一回り大きな器」は「外の世界」やただ単に「世界」とも呼ばれますが、ここでは「世界」と呼ぶことにして話を進めて行きます。

2.a. 「心性」と「体性」の分化

 ユルセルームと「世界」とはきってもきれない関係にあります。すべての「体性」の源が「ユルセルーム」であり、すべての「心性」の源が「世界」なのです。そしてこの二つが密接につながりあって構成されるのが「ユルセルーム世界」です。数多く存在する「体性」や「心性」もはじめは一つのものでありそれぞれ「ユルセルーム」、「世界」と呼ばれるものだったのですが、「世界」から「スィーラ」と呼ばれる巨大な「心性」が分化して以来、どちらも急速に分化が進みました。「ユルセルーム」からは「体性」が木や石や馬などのさまざまな形へ分化し、それに深く結び付くさまざまな気質の精神(魂・霊)である「心性」が「世界」から分化していったのです。(この分化を方向づけたのは巨大な「心性」たる「スィーラ」です。)
 「体性」と「心性」とは密接につながっており、「体性」は分化した「心性」とつながってはじめてその「心性」にあわせて分化します。ただし、分化後の「体性」が非常に決定的であるのに対して「心性」の分化は不完全で、分化後もまだ一つの「世界」としての機能を失っていないのです。

2.b. 「心性」と「世界」

 「心性」と「世界」とのつながりをもっともよく示しているのが「夢」です。「夢」は「世界」の断片であり、すべての「夢」は「世界」の根からのびた「心性」という名の枝なのです。
「心性」と「世界」 ユルセルームの物質は十分強力な「心性」さえ持っていれば「夢」を通して「世界」をのぞくことができます。ユルセルーム世界には「夢語り」という能力を持つものたちがおり、彼らは自分の夢を通って「世界」の根の暗がりに降り、そこから他者の夢にはいることができます。そのことがこの事実を如実に示しているでしょう。(無論、眠人たちはみなこの能力を持っています。)

2.c. 「世界」とソース・イメージ

 さて、なぜこの「世界」と魔法が関係しているのでしょうか?実は、それは「心性」の分化の仕方に秘密があります。……「世界」には、九つのソースといくつものイメージが混沌としてまじりあいながら循環しています。その流れにちいさな波が起こったときに澱(よど)んだソースやイメージが混沌とした「世界」に個性を作り出して「心性」に分化させるのです。ソースは「心性」を大まかに特徴づけて「体性」の分化にも強く影響します。よって人間(エンダラトス)の「心性」の分化には最低でも「真の黒」(デュール)「真の白」(イーヴォ)「真の金」(オザン)の三つのソースが関わっているはずです。
 そしてイメージは分化したその個の性格・気質に少なからぬ影響を及ぼしています。ただしこれらの分化を促したソースやイメージは「心性」のかなり深いところに隠されているので、どうやっても見る(知覚する)ことはできません。(「心性」の弱いものについては別です。3.」.項の錬金術参照)ただし、ソースやイメージは強い感情や魔法によって「心性」に呼び寄せられることがあり、そういったものは「心性」の表層にあるので見ることができるかも知れません。

 さて、ソースとイメージは「世界」を循環しているので「夢」を通して「世界」を見ているものはソースやイメージに偶然出くわすことがあります。そして、出くわしたときのショックの大きかったものは「心性」の表層に引っかかってしまいます。こうして「なにかもやもやしたもの」として知覚されつつ(あまりにショックの大きかったものははっきりと形を持ったイメージとして知覚されます。または訓練次第で常に自分の保持してるイメージをはっきり知覚することもできるようになります。)ソースやイメージはたまってゆくのです。
 「夢」以外でも「世界」と接触することはあります。強い魔法や感情に接触したときは夢を見ていなくても「世界」を通してソースやイメージが飛び込んできます。このような場合ははっきりとしたイメージとして知覚されることがほとんどです。また「夢」でも、他人の強い感情(場合によっては自分の強い感情)や魔法を受けて強制的に見せられたときなどはこれと同じです。

2.d. 魔法の使用

 「心性」の表層にたまってきたソースやイメージはふとした契機で一気に解放されます。その際に秩序だって放たれたソースやイメージは九つの力を操って、ユルセルーム世界に影響を及ぼします・・・・・・これが魔法です。感情によって「心性」の状態は変わってくるので、無論それは魔法の効果にも影響します。
 その「ふとした契機」というものが訪れるのはなぜか「心性」の都合にまかせれる部分が大きく、そのせいで魔法は使いたいときに使いたいものを使うことができるのです。ただ、ソースやイメージの内容をはっきりと知覚していない限り、どんな魔法が発動されるのか分かりません。(その魔法が自分に益なすものか害なすものかの直感的判断力は子どもの方が強いようです。)無論「心性」自体思い通りになるものでもなく、勝手に魔法が発動したりもします。

2.e. 魔法の循環

 個々のソースやイメージだけに限らず、ひとまとまりにまとまったソースやイメージも「世界」を循環します。魔法発動の際に一度ひとかたまりで秩序だって解放されたソースとイメージは心性力次第でそのまま保持し続けることもできます。何度もひとかたまりで保持されたソースとイメージは一緒にいるのが癖になり、保持に失敗して「世界」に解放されても離れようとしません。その癖は他のソースやイメージにも伝染してゆき、こうして魔法の形に固まったソースとイメージが「世界」にばらまかれ循環してゆきます。
 このように多くの魔法が「世界」にばらまかれていた時代が「四王国時代」で、まったく魔法の循環の見られなかった時代が「薄暗がりの時代」、簡単な魔法だけ循環しはじめたのが「大旗戦争の時代」です。

2.f. 霊縁・地縁と魔法

 「音きき」(3.5項参照)は人の運命を占う上で「心性」の分化に寄与したソース群を五つの「霊縁」と六つの「地縁」に分けて考えるのを好みます。彼らにいわせると「霊縁」とは人が生まれる際、すなわち「心性」が分化する際に寄与した自然界の五つの精霊(地・水・火・風・歌)のことで、「地縁」とは「心性」が分化するときに寄与した、生まれた「場所」(石・森・海・氷・光・闇)の持つ「心性」であるらしいです。霊縁はソースとの一対一の対応がありませんが、地縁にはそれぞれ《石=ガルパニ、森=メディート、海=アウル、氷=マウ・レ、光=オザン、闇=デュール》の対応があります。(B-Roads・F-Roadsのキャラクターメイキングはこの意見に従っています。)
 また「大旗戦争の時代」には「霊縁」「地縁」がその人の使う魔法の傾向に関与していることが一般に認められるようになりました。何でも分類しなくては気の済まないへリアの賢者たちは、ソースに完全に対応しない五つの「霊縁」がなぜ魔法と密接な関わりを持つのか大論争を繰り広げているようです。

3章.魔法使い

 魔法的現象のごく一般的なユルセルーム世界では「魔法使い」というのは特に「世界」の理に精通したものを指すことになります。ただ本当にそうであるものは数少なく、歴史の表舞台にでてくることも希です。よって、一般に「魔法使い」と呼ばれる人は「普通の人よりは魔法をよくする者」である程度です。
 ユルセルーム世界では時代によって「世界」を循環する「ソース」「イメージ」「魔法」の密度が異なり、そのせいで「魔法使い」のスタイルも大きく異なります。以下、時代ごとの「魔法使い」(自分が魔法を使っていると意識していない者も含めて)について述べてゆきます。

3.a. イニアの花の時代

 この時代「言葉」は「世界」に密接につながっており「ソース」や「イメージ」にそれぞれ対応していました。とくに、イーヴォがその魂を分け与えて創造したフェルダノンである“頂の”エスティリオが人々に教えた「古代神聖語」は「太古の力」に直結していたそうです。そして「真音」と呼ばれる正確な発音を持ってスィーラの御名を唱えると直接スィーラに嘆願することもできました。
(なお、この「直接嘆願」を成し遂げた者として“静かの公”グンド(ヒュノー攻略の際)と“一角龍”イルク・セイリオン(どこで為したかは不明)の二人が知られています。)
 統一王朝において魔法使いの身分は以下のように分けられていました。(「花翼典範」より)
身分 使用する魔法の種類
「隠れたる獣」 力の魔法
「隠れたる放浪者」 探索の魔法
「隠れたる旅人」 移動の魔法
「隠れたる道化 幻影の魔法
「隠れたる隠者」 洞察の魔法
「隠れたる幼な子」 生命の魔法
「隠れたる娘」 器決めの魔法
「隠れたる息子」 器変えの魔法
「隠れたる星の司」 発見の魔法
「隠れたる沈黙の司」 変異混成の魔法
「隠れたる頂の司」 無に非ざる無の魔法


3.b. 四王国時代(Roads to Lord)

 “大戦”とそのあとの《大混乱期》のため正しい「言葉」を伝えてゆく者は少なくなり、いくつかの簡単な「呪文」という形でのみ残ることになりました。また、イニアの花の時代に蒔かれた多くの魔法が「世界」を循環していました。へリアの賢者はこの当時の魔法を地・水・火・風の四大元素と白魔術・黒魔術・マインドの七つの系統に分類していました。

3.c. 薄暗がりの時代(Beyond Roads to Lord)

 “忘却の呪縛”による《大暗黒期》の間に、正しい「言葉」や「世界」を循環する魔法は完全に失われてしまいました。こうして、魔法を使おうとする者は「世界」をめぐる「ソース」や「イメージ」などの象徴のもつ意味を研究し、それの組み合わせより新たに魔法を生成しなくてはならなくなりました。
 しかし、悪いことばかりではありませんでした。「いや果てのハヴァエルのとばり」の消失によって「三千と一つの島々」との交易が可能になったのです。「三千と一つの島々」には未だ多くの「呪文」が残っており、また恐るべき魔法の才を有した術者が存在したのです。第二次大航海時代の幕開けでした。

3.d. 第二次大航海時代(Shade of South)

 「三千と一つの島」出身の「魔法使い」と呼ばれるものたちは、未だ太古の混沌の力を色濃く残す南西の領域で魔法を修得するために行われる厳しい修行の結果、その「体性」は未分化で力の状態を維持しており「心性」と混じりあっています。そのおかげで彼らは「体性」や「心性」という力を直接操って「ユルセルーム」や「世界」に触れることができます。特にその能力に秀でた者は「変異混成術師」と呼ばれ生物・非生物を問わず全く異質なものどうしを融合し混成させることができます。また、ここの出身の「魔法使い」はその「心性」の分化の際にいずれかのソースが強く関わっており、生まれながらにしてその力を操ることができます。

3.e. 大旗戦争の時代(Far Roads to Lord)

 第二次大航海時代に「三千と一つの島」の魔法使いが使ったいくつもの「魔法」のうち簡単なものはやがて「世界」を循環するようになりました。ただ、複雑な象徴の組み合わせが必要な魔法を生成する困難さは「薄暗がりの時代」となんら変わってはいません。魔法の研究は日増しに活発になってきており、分類好きのへリアの賢者たちはいまユルセルームで使われている魔法のスタイルを11系統に分類しました。この分類法は一般的に使われることはないようです。
・法則の探求
 ソースやイメージの持つ象徴的意味を探ろうとしている人たちのスタイルです。彼らは規則正しい天体の動きやいわゆる風水、あるいは数学(とくに幾何学)がソースやイメージと密接に関わっていると考えています。

・音きき
 北の夜空高く輝く「運命の瞳」ハウクスの輝きを読みとる者のことをいいます。彼らはまた、出会った相手の体に隠されているいくつかのしるしを手がかりにその「体性」と「心性」の傾向である「霊縁」「地縁」を察知し、その宿した運命を知ることができます。彼らはたいてい五感に何らかの傷を負っておりその代わりに強い霊感を持っています。

・想医への道
 病や呪いに襲われた者の「心性」の表層にあるゆがんだソースやイメージを調和へと導くことによって「世界」と触れあい「世界」を理解することをめざす者のスタイルです。ソース「真の白」「真の青」を用いるのに精通しています。

・夢語り

 自分の夢を通って「世界」の根の暗がりに降り、そこから他者の夢にはいることができる者のことをいいます。彼らはそうして「世界の断片」たる「心性」についての理解を増し「世界」の真実を知ろうとしています。眠人(シリリリ)はみなこの能力を持っていますが、彼らの「心性」は他の種族よりも「世界」に近いので50才を越した眠人はほとんど目を覚まさずに夢を見て暮らすことになります。

・錬金術

 鉱物の持つ「心性」の分化に関わったソースやイメージを調べて、それを導き出すことによって隠された太古の魔法を見つけようとする者のスタイルです。(鉱物の「心性」は非常に弱いのでこのようなことも可能です。)彼らは一度構成された魔法をたやすく元のソースとイメージに分解したり、ソースやイメージ、あるいは魔法を特殊な物質(ふつう「保存瓶」と呼ばれるもののなかに入っている物質)の「心性」に保持させることもできます。保持させた魔法は自在に解放することができます。

・カードディール

 カードや骨牌、ダイスの目などのめぐりから「世界」のソースやイメージの流れを読みとり、それを自在に操ろうとしている者たちのスタイルです。しかし、それに成功した者はまだ存在せず、たいした干渉はできないようです。

・「世界」のなかで踊る

 実際に踊っているわけではなく、何らかの行為を通して感情を高めることで「世界」に触れようとしている者のスタイルをいいます。芸人、芸術家のなかにこのスタイルに分類できる魔法使い(本人はそう思ってはいないでしょうが)が多いといわれています。

・儀式魔法

 魔法陣を用いて「世界」との接触を図る人たちのスタイルです。魔法陣を用いた儀式にはソースやイメージの象徴が用いられるので、無論ソースやイメージの意味するものを研究しているのですが《法則の探求》を行う者よりは柔軟な考え方をしています。

・まじない

 植物や小動物の持つ「心性」の分化に関わったソースやイメージを調べて、それを導き出すことによって「世界」を理解しようとすることをいいます。ただし、植物や小動物の「心性」は鉱物よりは強いのでその行為はかなり不安定かつ困難をきわめその結果、強い「心性」をもち霊感の高い者だけが《まじない》であることができるのです。彼らはなぜか人の多いところで暮らすのを好まず、小さな村のはずれに住むことが多いようです。

・言葉紡ぎ

 イニアの花の時代の頃のように「世界」とつながりあった「言葉」を探し「世界」に触れようとする者ことをいいます。言葉を紡ぐ者たちは正しい「言葉」の“影”のようなものをつかむことに成功しており、言葉を操ることで人を喜ばせたり震え上がらしたりすることができます。役者や講釈師、為政者のなかにもこのスタイルに分類される者がいるそうです。

・風読み

 自然の「心性」たちと交感し、その表面に見られるソースやイメージを察知して現在の「世界」の流れをつかもうとするスタイルのことをいいます。自然界の力である地・水・火・風の扱いに習熟しており、自然の歪みには敏感です。このスタイルの術者は「風使い」「風読み」「隠れた知恵を持つ人」などと呼ばれたりしますが、それ以外にも名だたる船乗りや農夫のなかには知らず知らずのうちにこのスタイルで生きている者がいるでしょう。

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寿琅啓吾 <soga@summer.nifty.jp>