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2nd NOVEL
発売前レビューその2.
なお,彩野さんの記憶障害について公式サイトの範囲では前向性健忘と明記されない.efでも確か作中でそのように書かれることはなかった.だいいち何度も思い出されそして読み継がれてゆく千尋の記憶の在り方は特別な部類だと思われる.一方「あの、素晴らしい をもう一度」では前向性健忘のことがはっきり語られている.勇者と魔法と現代的な脳専門の医者が同居することによって,あのすばで語られる世界はどこか人手でかき交ぜられたような足場のなさを匂わせている.そうでもないならこんな堅苦しい言葉を使う必要はないし,あのすばでもわざわざ『くり返し病』と言い直している.
とはいえ,僕らが彩野さんのことを前向性健忘だと考える必然もまたない.医学的な診断そのものは重要でない.現在の記憶を15分しか留められないことは,彩野さんは物語を断片的に語るのだ,という事情を素朴に支持するものだろう.彼女は前向性健忘ではなくただそういう在り方をするのであって,だからこそそれは,僕ら15分という短い時間から未来的な時間の流れを生み出してゆけるのではないか,という企みへと繋がっている.時計の針が刻まれてゆくという意味での未来について彩野さんは記憶を保てないのかもしれないけれど,NOVELの時間は時計とは別な風に流れるものだからさ,2nd Future みたいなのがそこにあり得るんじゃないのか.
直哉/ナオヤが不在の物語.そのストーリーテラー,つまり嘘つきとしての彩野さんの性質は,事故の前も後もきっと変わってない.彼女が大した語り手であることに直哉や僕らがようやく気付くことができるのは,記憶を15分しか留められないという事情がそれを端的に見せてくれたからなのだろう.すまぬ.
- 出版社/メーカー: 日本一ソフトウェア
- 発売日: 2010/07/29
- メディア: Video Game
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千秋ちゃんが好きだったけど書いてるうちに彩野さんのことも好きになってきました.
P.S.
テクストの予告コーナーで本人が前向性健忘っていってますね.
http://www.textweb.jp/secondnovel
あと逆向性健忘もある.なんかもう,たいへんやんそれ…….
(2010/7/24)
「ラッキーカラーはモノトーン!」ふたたび.
あまり細かいところに触れるのは野暮であるが,ブラインドフォーチュン・ビスケットまわりの話は好きなので少しばかり書いとく.
トンネルオーブン前での出来事について.
「このトンネルオーブンは二〇メートルの長さがあり,ビスケットの生地はこの中を五分間掛けて移動し,毎秒五枚の速度で焼きあげられます.もう一台のオーブンと合わせて,毎時三六〇〇〇枚――」
少女はオーブンの口を覗き込み,列になって続々と出てくるプレートを,口を尖らせながら,左から右へ,真ん丸にした目で追っている.
クリスはその表情に笑いそうになりながら,
「熱いので,お手を触れないよう――」
その言葉が終らないうちに,少女の手がラインに伸び,焼けたプレートに触れた.
――プレートの温度は二〇〇度.
「大丈夫ですか!?」
(p.74-75)
一撃で頭部が陥没し,そのまま跳ね飛ばされたクリスは,トンネルオーブンの口に突っ込んだ.周囲を囲むパートから悲鳴が上がり,肉の焼ける匂いが辺りに漂った.
(p.252)
トンネルオーブンの高熱が脅威であることを僕らはクリスとアルファとのやりとりであらかじめ予習済みだった.高熱をものともしないアルファが普通でないことも同様に知っている.そして再びトンネルオーブンにおいて同じことが繰り返されたとき,クリスもやはり常人でないことを僕らはよく理解することになる.
ライン生産されるブラインドフォーチュン・ビスケットの運勢について.
『大吉! 大吉! 仕事運良好・新しい出会いの予感! 金運良好・意外な収入が! 恋愛運良好・気になる異性と結ばれるチャンス! 健康運注意・体を壊さないように! ラッキーカラーはモノトーン!』
(p.76)
ビスケットの天使はテンションが高い.
「(もぐもぐ)素晴らしいわ! 日産三〇万枚,ストック量五万カートンの中の一枚一枚が,こんなに可愛くて楽しくて(もぐもぐ)おいしいなんて! なんて素敵!」
(p.77)
アルファの陽性でテンション高い言葉もどこかビスケットの天使と似ている.僕のなかでふたつは同じ声で聴こえてくる.
滞空していた天使は次々に寿命を終えて弾け飛び,数秒後,最後の天使が,
『ラッキーカラーはモノトーン!』と叫んで消えると,場内には通常の機械音だけが残った.
(p.80)
運勢がさっきと同じなんだぜ! 僕らはもちろん,おみくじにたいしたバリエーションがないことを知っていて,それは機械がランダムに選択した結果じゃないのか.そんなんでいいのか.人の運勢って誰がどうやって決めるんだろうね? 人? 機械? 神様? サイコロを振る? 振らない? 決断する? しない?
たとえば,ストック量五万カートンについて,
「ストックのことまで,よく勉強されましたね」
と普段なら決して口にしないであろう――場合によっては無礼と取られるかもしれない――言葉が,つい漏れた.
しかし,
「いいえ,勉強はしていません」と言って,少女は微笑んだ.「ただ知っているだけです」
(p.77)
意図して勉強したわけではない.機械的にただ知っている.だけどね.
ナオミは本から顔を上げ,
「……あんた,決断力があるんだかないんだか,どっちなのよ」と言った.
「決断はしていません」と,アルファは言った.「提示された条件に従って選択しているだけです」
「ふうん」と,ナオミは言った.「ま,どっちでもいいけど」
(p.144)
決める,というのは意図をもって決断するのかもしれないし,機械的に選択するのかもしれない.それは黒い天使? 白い天使?
まぁ,どっちでもいいけどな! というお話.
それよかハンバーグ食べたい.
「ラッキーカラーはモノトーン!」
ウィザードリィ,というか隣り合わせの灰と青春が好きだった彼と接点があったのは不思議なのだけど,そういう表面的なとこは友達となるのにあまり関係ないんだろう.ベルセルク,ねこぢるうどんにも僕はついてゆけなかった.そして彼はブラックロッドに心酔していた.僕は彼の好みから勝手に想像していて,外連味のある,極端な志向の,ちょっとおかしいような,乱暴そうな,つまり男子の好きそうな話は嫌いだったから読まなかった.まぁ,これについては雨宮慶太の絵も5割くらい悪い.
表面において全く趣味の違う彼が僕と僕のセッションのことを慕ってくれたのはとても光栄だった.
- 作者: 古橋秀之,前嶋重機
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2000/01/01
- メディア: 文庫
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彼は僕らとMさんが集う場を築き,Mさんのファンページを作り,僕らのささやかな数年間を支えた男だった.ご存命であればあのまま大作家になっておられたであろうMさんもきっとこの小説が好きだったのだろうな,といまさらにして思う.どこか似ているよ.
周りに望月三起也とか武論尊とか板垣恵介とか平野耕太とか好きな人が多くて辛かった.卒業して彼とは会わなくなった頃,男子っぽい話にも慣れてきた.そういうこともあって,機会があるごとに古本屋で探してたけど置いてなかった.だけど先日,安倍さんが前嶋重機という人を誉めているのを見たので勢いがついてAmazonで購入.3冊注文して,一番先に届いたこの巻から読んでる.
ワルモノは捕縛されたところから始まってなんぼだわ.
ブライトライツ・ホーリーランドは魅力的な女の子満載なので僕にとっても読みやすかった.第一,上に挙げた作家とあえて並置するような作品でもない.薫さんがときどき言うように,ただの傑作.
あと絵が良いので何度も口絵と本文とを行ったり来たりした.
ブラインドフォーチュン・ビスケットが可笑しいと思う.星占いを見るのは一日一回か一月に一回で事足りる.5分のうちに1500回唱和されるフォーチュンはたいへんばからしい(p.80).
「こんなに可愛くて楽しくて(もぐもぐ)おいしいなんて! なんて素敵!」(p.77)
おいしいかかわいいかどっちかにしろ.
素敵でばからしいフォーチュンが全てのひとたちに降り注ぎますように!
うどんが好きだった.
昨日通販で届いた讃岐うどんのセットが目に付いた.
元々は美琴の為に取り寄せたのだが,反応はイマイチだった.
「子供の頃,うどんが好きだったから,喜ぶと思ったんだけどなぁ」
君はどんなけお母さんなのか.
ま,人の好みってのは常に変化するものだしな.
特に子供の頃,好きだったからといって,今も好きかどうかは分からない.
昨日好きだったものが今日違ってるのは当たり前で,しかも,何歳になっても親と子では流れてる時間の速さが違っていてね,実家から宅配便に包まれてやってくる好みはおのずとずれてゆくのだけど.
僕の代わりに僕の好みを覚えていてくれるのだ,と時々思うこともあります.
ゲームの時間
Civ4を始めたらどうしてすぐに朝が来るのですか.
われら最強,カイロスの大逆襲.
中西氏:
やっぱり,ちょっとした時間で遊べちゃうコンテンツが空いた時間を浸食してきますから。
志倉氏:
なので,ノベルゲームの長所を活かすためにも,プレイヤーさんへの「遊ばせ方」みたいな部分はもっと工夫していかなくてはと考えています。
例えば僕が作ったSteins;Gateでは,章仕立てのストーリー構成になっているのですが,これは切りよく遊べるようにという配慮からですし,さらには1章毎にバラ売りする可能性など,今後のビジネスを考慮したうえでの仕様でもありました。
http://www.4gamer.net/games/098/G009802/20100715070/
さて,ちょっとした時間で遊べちゃうコンテンツははたしてちょっとした時間しか遊んでないのだろうか.1分って意識してみると案外長いよねなんてよく言われる.「己の信ずる道を征け」とか「クラシックダンジョン」とかステージクリア,つまりゲームのきりがよくて止められるところまでに時計の針で2,3分しかかからなくても,これ僕的には5分くらい経ってる気がするのよね.クリアタイムみて驚く.何かに集中してれば必ずしも時間がはやく過ぎてゆくということはなくて,Civ4の8時間は2時間にちぢまるけど,PSPの3分は5分にのびてしまう.人間というのはそもそもどうにも正しく時間の流れ方を把握できないのですよね.
もともと数十時間の話を章でばら売りしてちょっとした時間で読めるようにする,というのは遊ぶ人を拘束する時間に配慮したのであって,遊ぶ人がそこに入り込んでゆく時間に配慮したものじゃないです.たとえば40時間の長いゲームをいまからやるぞっ,というような覚悟とか長時間椅子に座ってるストレスとかが遊ぶ人の時間感覚を変容させるであろうから,ばらばらにする前とした後のゲームというのはもちろん違う感じになるでしょう.
セカンドノベルが発表されたとき,この15分という数字はちょっとした時間で遊べちゃうPSPでの遊び方に合わせてはじきだされたのだと思いました.記憶障害のことはわりとどうでもいいような気がします.ここでは拘束時間に配慮しただけじゃなくて,僕らの時間感覚についても意識せざるを得ないようになってます.ゲーム紹介や体験版を読んでみると,時計の針では15分で語られるお話のなかに15分では語りきれぬほどのずっと大きな過去の在り方やこれからの未来の時間の過ごし方が含まれているようでした.僕らにとって時計の針での15分は実にファンタスティックです.それは3分くらいにしか感じられないかもしれないし,30分,もしかしたら10時間くらいに感じられるのかもしれないよ.
記憶が曖昧だったり時間の流れ方が普通でないのはこの女の子だけじゃなくて,物語に触れる彼や僕,僕らもそうであってね.そしてそれが,もしかするとこの女の子も含めて当たり前の普通の出来事かもしれなくて.
時間というのは画面の向こうでもこっちでも伸び縮みしてゆくことの面白さ,っていうのがあるんじゃないかな.きっと.
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こういうのを発売前レビューっていうのかしら.
名前
小早川でなく小花川(こばなかわ).ちょっと発音しにくいこの名字のほうでいちいち呼んでくれる九澄さんとか春菜先生がよかったです.
あと名前をイングリッドにするかイングリットにするかで迷ったという話もいい.グリちゃんという愛称を思いついたおかげで迷いが晴れて,どちらにしてもしっくりくるように思えてきた,ということだったのではないか.
いやなに.急にイングリット描きたくなったというだけでして.
女の子のちびっこが大剣振り回すというのは何が原典ですかね.グラドリエルより古い,というのが条件ですが.
ちびっこ+巨大ロボという80年代の想像力(幻夢戦記レダのヨニ)と高橋留美子(らんま1/2のシャンプーあたり)が悪魔合体してる感じなのですが,どうももうひとつ足りない.
聖伝の龍王(+龍牙刀)の女の子版,といったほうがヴィジュアル的には近いよね.
あと白土三平の漫画に出ていそうな感じもする.
(Tool: Brushes + iPad)
起源
ギャルゲーを本格的に始めたのは大学四回生のころからである.
ギャルゲーに本格という言葉はあまり繋がらないかもしれない.本格ギャルゲー,とかさ.
だとしても,TRPGというゲーム(電源不要)で10年間いかれてた僕の心に電源を入れたのがギャルゲーであるのは間違いなくて,それは今に至る10年以上も続く本格的な趣味の始まりだった.
当時すでにギャルゲーは若い人のためのものであった,と僕ですら言います.だいたいサークルの後輩たちが熱狂してたんですよ.僕より上の世代はあんまり.それで雫とか痕とかなんか1文字のゲームが大流行していてね.僕は上よりは下と仲良かったんだけどMacユーザでさ.ついでにいうとDOS/Vユーザでもあったから98のゲームなんかできやしねぇ.
いいんです.TRISTAN超面白かったから.
http://www.littlewingpinball.net/mediawiki-ja/index.php/TRISTAN_Features
あとMacでTRPGの同人誌を山ほど作った.たくさんフルカラーCGを描いた.16色などくそ喰らえだ.そんな4年間.
そのうち先輩から不要品のPC-286を貰ってきてようやく98のゲームも出来るようになったのでした.98用の3.5インチドライブがなかったからDOS/Vのほうへまずデータを入れてZMODEMで98側のHDDヘシリアル転送.遅いし何度も失敗しました.なにゆえMacでは既にCD-ROMの時代だったというにそんなことをせねば…….
あとこのHDDが時代ものでよくジャムるのでした.ゲーム中は机を揺らしてはならない!
とかずいぶん苦労をした末に,TRPG馬鹿だった僕という先輩は,今にして思えば年甲斐もなくギャルゲーマーになっていったのだといいます.
僕が雫について語るなら瑠璃子さんと思われそうだけど,当時はもちろんさおりんのファンだった.なんで今みたいに瑠璃子さんを好きになったのか全く覚えてない.多分だけど,つるんでた二人の友人の一人がみずぴーでもう一人がさおりんだったから棲み分け的に僕は瑠璃子さんになったのではなかったろうか.
高校の頃,僕は西武ファンだったのだけど野球ゲームでセ・リーグ縛りだったから仕方なく余っていた巨人を選んでいた.巨人がずっと好きだということはないが,今でも藤田巨人についてだけはファンである.
好きになるにあたって最初にどう選んだかは必ずしも問題ではない.しかも,その選択が余りものという形をとることも珍しくはない.むしろ,余りものであればこそ思慮臭さや意図臭さを超えるということもあるのだろう.
暮らしのなかではなかなかたどり着けない境地であるが,ゲームにまつわる好意はこういうところに充分な余裕をもっている.
さおりんについては普通の可愛い女の子がこんなすごいことに,という衝撃があったので,瑠璃子さんのほうがずっと普通に見えたんじゃなかったかな.
ギャルゲーやってるうちに普通の可愛い女の子がすごいことになるのは当たり前で慣れてきたのでようやくずっと普通な瑠璃子さんの気持ちに近づくことが出来た,というのもあったかもしれない.
iPhoneのときはぜんぶ人差し指だけで描いてたけれど,iPadくらいのサイズになると中指も使えるようになる.人差し指で輪郭を描いて中指で塗る,という感じ.
指とガラスがきゅっきゅとこすれてしまうので,そういう意味でiPadはもっと紙みたいになさわり心地になるとよいですね.
(Tool: Brushes + iPad)
Himawari no sakamichi
CGが埋まってないと思ったら,おや,まだ続きがあるぞ.
……俺を引っ張る.
片方は妹……,
片方は幽霊……いや幻覚?
意味が分からん.
可笑しい.酒神の戯れ.
羽咲「あはは……私あれから大きくなったからあの時よりも向日葵が小さく見えると思ってたよ……」
由岐「どっちにしても向日葵は人間より大きいからねぇ……逆にさ,花の部分に近づいた分,大きく見えるのかもね」
羽咲「あ,そうか……あの頃は小さすぎて,そのてっぺんが良く見えなかったから……」
由岐「そういう事だね……まぁ世の中には自分が大きくなっても,大きいまんまなものもあるって事だよ」
羽咲「そうですね……向日葵はずっと,ずっと大きかった」
こっちのほうが判りやすい.とはいえ由岐の謎解きは気に入らない.あなたはもうお姉ちゃんになっちゃったから年少者の大きさのとらえ方が判んなくなってんじゃないかな.向日葵と対面する僕ら弟妹の気持ち.それは背丈では測れない.向日葵はずっと,ずっと大きかった.
Which Dreamed It ~ Wonderful every day
僕は自分より大きい人の背丈があんまり分かんないです.10センチくらい高い人までは自分と同じくらいに思う.向かい合ってるときは特に判らないです.
身長を数字で聞いたり写真撮るみたいに横に並ばないと判んない.それは測定.彼らの背が高いことは本人から聞いて情報としては理解してるんだけど,面と向かって話してるとそういうのはない.
自分より低い人だと高い人ほどのずれはない,といっても僕より数字の上では20センチ背が低いはずの姉は僕にとって5センチほど低いくらいの感じでしかない.
面と向かうことは測定じゃなくて,向かい合った目と目がなんかそういう調整をしてるのだと思う.
「ガキには,大人は大人にしか見えないんだよ……」
「ガキの時はさ……由岐姉は大きな存在だったから……」
「大きい」じゃなくて「大きな存在」です.小さい頃の僕は大人を見て身体の大きい人だなぁ,と思った記憶がない.運動をしなかったせいかもしれないけれど,大人とはけして大きい人ではなく,大人はそのまんま大人であるようにしか思えない.
おっきかった由岐姉に背丈が追いつくお話,ではない.あるいは由岐姉の背中に追いつく話,とかつい考えなしに言いそうになったけど,由岐姉はいつもこっちを見てくれていたから背中なんて知らないよね.
背丈でも背中でもない存在の大きさは対面することによって記憶される.ならば,目と目じゃなくて手と手が触れあったときこそが意外.
「あの頃と全然違う……ほら……」
由岐姉は俺の腕を掴む.
「あんなに細かった腕もさぁ……私より全然太いじゃん……」
「ああ……あの時は由岐姉の手がこんなに小さいって知らなかったよ……」
「でも……それでも俺の胸囲より小さいだろ……身体だって俺より全然小さい……」
触って測定してようやく身体の太さや大きさの違いに気付くのだ.
だからどうということもなく.それらはただ7年という数字を言い換えただけであって.最後に対面することが叶うのならば,由岐姉は由岐姉であるようにしか見えない.
この作品についてなにか言おうとすると僕が(僕らが)この十年以上考えてきたことを繰り返すだけになりそうになるよ.
だからなるべく新しいことを言います.言おうとします.






