こうの史代「さんさん録」

一段落ついたところですが,もしも順番が逆だったら,つまり父でなく母が先であったなら一体父はどうなっていただろう,と母が心配していました.いつの誰のために何を心配しているのか理屈は交差しているのですが,そういう気持ちはそういうものとしてどこかへ届けられるのであって.

乃菜は乃菜でなにかをしているらしいというのが良いです.僕らの目からはまあ何かこちゃこちゃしてるようにしか見えなくて,想像は可能なんだけどそうすることにあまり意味はないというか.たとえば乃菜がカーテンにぺたぺた触ってる様子とか,僕ら(男の子は)もうカーテンの高さにまで届くほどになってしまったのだけど,むかしそれはもっと広くて高いものに見えた,とかいま振りかえるとそう作るけれど,ちっちゃい頃はたぶんべつにそんな考えもなくカーテンはただぱたぱたするものでした.干してる布団に顔を埋めたりしているあたりも好みです.ちっちゃい頃よくやったよねぇ.ベランダの手すりの高さとはなぜこんなにも子供が全身を預けるにふさわしい高さなのでありましょうか.

疏水太郎

桜のきわは曖昧の(5)

母に電話.桜を見ると父のことを思い出すと言う.罪な花で.

亡き人を思い出すというのはなにも桜の属性ではなく,華やかで,そしてそれを見るために連れ立って出かけたことはなんでも思い出になりやすくて,その華やかさが罪であるというどうしようもなくありふれた気持ちを,少しでも具体的なものに負わせたかったというだけで,桜にはいつもごめんなさいで.

どこまでも続く桜,染井吉野の森,というこの華やかすぎる春が造られたわけにはいくつも調査がありますが,そうしたことは一寸,花見酒に忘れて,いま僕の目の前には歌月十夜のレンによく似た桜の精がいて,彼女はどこか掛け違えたような情熱でもって桜を絶やさないようにしていて,桜の森が世界の果てに届いてしまうと彼女はあわてて続きの森を描き足してゆく,少しでも虚があるとそこから桜は枯れ始めるのです,だから彼女は桜の上に桜を塗り重ね,世界の果ては押し広げられ,その後ろに桜が残されてゆく,そうした間違った理屈に突き動かされるちいさな者がいたとして,それは馬鹿げているけれど愛おしくて,一面の淡紅色の向こうに少女を透かしてみるならば,きっとその酒はツンとくるでしょう.

京都の桜について印象深い出来事がありました.二月のこと,桜の開花の基準となる京都地方気象台の標本木が引退し,若い桜にその役目を譲りました.気象台に50年以上勤めていたということです.新たな若木のため,大阪管区気象台には正式に届けが出されました.このわざわざ管区気象台に届けを出すってところがね,ここでは桜も役人の内のようで面白いです.というのは京都のむかしむかし,六道珍皇寺の井戸から小野篁は冥府へ通ったといいますが,昼は朝廷,夜は閻魔大王の冥官として仕えた彼の話でも,あの世が官僚制という地上臭さが好きでして.

あるとき,六道の辻をそのレンによく似た女の子が曲がりました.はて,わたしのしらない道があるわ,これはいけない,と井戸をくぐり,賽の河原ゆき,桜を描き,三途の川を渡り,桜を描き,大王の前へ来る頃にはもう,あの世は桜で一杯だったとか.そのようにこの世とあの世は地続きで,昨今はスギ花粉も地獄まで飛びます.ここにひとりの男が大王の裁きを受けておりますが,「疏水太郎よ.なんじ八百の大きな嘘をついた罪によって…へくじっ! 痛ーーっ!」と大王様も舌を噛むような次第ですので,この季節は僕の嘘も多少大目に見てもらえますでしょうか.

参考:京都の桜の基準,半世紀に幕 気象台「標本木」世代交代(京都新聞2/14)

疏水太郎

まじぽか

ロボ娘で鉄子とくりゃ「がんぶる!」でんがな.読みが違うけど.

まずは継ぎ目を数えるところから始めたい.キッズでの放映は14日から.

疏水太郎

涼宮ハルヒの退屈

連載版,笹の葉ラプソディに関する文章.お貸ししますわよん,と言っていたものが三年の時を越えて今,DALちんさんちへ遅配,あるいは誤配.当時者以外文脈を忘れていると思うので覚えてる限りで補足しておくと,「全てのヒロインのイベントを上手くこなした上で、ヒロイン全員が主人公の周囲に居着いてしまっているご都合主義エンドの世界がある」というのは月姫における歌月十夜に対するDALさんのコメント(あるいは奈須きのこが言ってたことのDALさんによる引用)(注)で,歌月十夜というものにえらい衝撃やらこだわりを持っておられたようで,ならば涼宮ハルヒの憂鬱においては涼宮ハルヒの退屈がそれに当たると僕が思った,という話の流れでした.ちなみに「部室の宇宙人であることと個別に現前する電波」云々については僕でももはや意味をとれませんので誰か教えてください.

わざとじゃないのだけど,困るようなものばかり勧めてごめんなさいね.砂糖菓子とか.勝手な思い込みだったけど,好きだと思ったんです.

(注) 4/4追記.ただしくは,こちらとのこと.バカの女王呼ばわり,というような様子を当時を気にいっておられたのはそういう文脈でしたか.

余談.世話し世話される関係について.涼宮ハルヒの憂鬱においてキョンは同世代の子たちから熱い視線を一身に浴びていて,気が合うハルヒと二人協力して彼らを世話してやっていて,ミルキィシーズンにおける管理人さんとさちえさんというのは僕にとってはそれと同じような関係でした.パートナー.

そして,ハルヒみたいに部活やろうとか野球やろうとか七夕やろうとかいちいち誘ってくれる人は有り難い,というのはもう一度書き残しておきたいと思います.

疏水太郎