『鳶の丘村』地図


季節は真夏。

 紫赤の月も真中にさしかかり、

 帰翠祭にはいった頃の出来事。






Introduction1  鳶の丘
たそがれるまえの空、村の上空を周回する鳥一羽。

マスター:それではまず、木賊(とくさ)屋敷の方から話を始めます。あと一時間もすれば日も沈む頃、サムシュ爺さんは裏庭で畑仕事、ヨウタ婆さんは夕食の準備をしています。
(HELP:サムシュ・ヨウタって誰?)

セレーグ:それじゃあ、私は縁側でぼんやりして過去の事とかを思い出しています。
(HELP:セレーグって誰?)

マスター:すると向こうからリィタが来ますよ。

リィタ:「剣士さま、むこうの丘ではきれいな夕日がみえるのですよ。参りませんか?」
(HELP:リィタって誰?)

セレーグ:「・・・え、何かおっしゃりましたか?」

リィタ:「なにか考えごとをなさってるところでしたか?」 

セレーグ:「あ、ちょっと昔のことを。」

リィタ:「お邪魔してすみません・・。」

セレーグ:「いえ、何かご用で?」

リィタ:「いまごろ、丘のほうでは夕日がきれいにみえるとおもうんです。気分転換にどうですか?」

セレーグ:「そうですか。たまにはそういうのもいいかも知れませんね。」

オルビス:では、二人が丘へ向かうその途中、偶然すたすたと通りかかって
(HELP:オルビスって誰?)

  「おや、これはリィタさんじゃないですか。」

リィタ:「あら、オルビスさん。どうも、おひさしぶりです。」

オルビス:「どうしたんだい、こんな夕方に。夕食の準備とか忙しいんじゃないのかい。」

リィタ:「ええ。でもその夕餉に、よく香る草をそえようとおもうのです。それをとりに鳶の丘へむかうところなのです。」

オルビス:「もうすぐ、日も暮れるし、危ないかも知れない。・・いや、剣士殿がいれば安心か。」

リィタ:「あなたもごいっしょにどうですか?」

オルビス:「私もそう忙しくはないし・・・いいかな、セレーグ殿。」

セレーグ:「貴方がいれば心強い。」・・って、彼が腕が立つということは気付いていてもいいの?

マスター:まぁ、見た目通りの人物ではない、と思っているということで。

リィタ:「では、参りましょうか。」

マスター:リィタは軽く弾むように丘の斜面を上がります。20分くらいすると小高い丘の頂上に着きました。高さ120メートルくらいの丘です。丘の上は高い夏草で覆われていて、それは夕日に紅く照らされて、夕方の少し涼しい風で波打っています。

リィタ:「ほぅら、みてください。きれいでしょう。」

セレーグ:「ゆっくり夕日を見るなどということは久しぶりかもしれんな・・。」

オルビス:わたしは、一瞬、夕日を見てから顔をそむける。夕日が、燃えてゆく城の姿を思い出させたということで・・。(笑)

マスター:眼下には、村が広がっていて、道が西へずっと続いてゆきます。その道の行く先は王の道でしょう。そしてその向こうには沈みかけの太陽が。

リィタ:「ああ、みつけた。」

マスター:リィタは数歩向こうに、めざす香り草を見つけて、それを採ろうと足を進めます。その時、彼女は何かにつまずいて転んで、そのまま丘の斜面を転がっていってしまいます。

リィタ:「きゃあ・・」

オルビス:「これはいかん!」

セレーグ:急いで追いかけます。

マスター:まずいですね、その彼女の転がっている斜面には先がありません!小さな崖になっているようです。・・・彼女はそこで落ちてしまいました。

セレーグ:うわっ。下はどうなってるの?

マスター:のぞき込むと、崖は7メートルほどの高さなのですが、彼女は途中くるりと一回転すると無事に着地します。

オルビス:う〜ん、彼女は新体操をしていたのか・・などといってる場合じゃなく・・(笑)

  「大丈夫かい?いまそちらへ行くから。」

リィタ:「ええ。」

マスター:彼女自身もびっくりしたようで、呼吸が速くなっています。

セレーグ:「まったく驚いたなあ、あの身のこなしは。」

リィタ:「無我夢中で。これはきっとザリ神(注1)のおめぐみですわ。」

オルビス:「いや、なんにしても怪我がなくてよかった。これから気を付けるんだよ。」

リィタ:「ありがとうございます。ご心配かけて。」

マスター:このシーンはここで終わりです。

(注1)
“疾く過ぐる”ザリは天候や知識を司る旅人の守護神です。ただし、この村では主神(実質的に農業神)として祭られています。


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