『鳶の丘村』地図
Introduction2 黄昏の十字路
ゆく人くる人の交わるところ、何を招き何がおこるのか。

マスター:さて、剣士セレーグとオルビスが丘に着いたのと同時刻、日も暮れようとしている頃、エリュオンとキサナは仕事帰り、一緒に川辺を歩いています。・・・向こうに十字路が見えてきます。西、ようするに左へ行くと王の道、真っ直ぐ、もしくは右に行くと村です。
 ところで、キサナくん、あなたは沈み際の夕日が当たって茜色に照らされた人影を十字路に見ます。

キサナ:何かな・・と思って、注意深く見るけど・・。
(HELP:キサナって誰?)

マスター:それは、最近見ていなかったんですけど・・・リィタ=イアルトです。

セレーグ:え、何でこんな所にいるの?

マスター:(無視して)そして彼女は、

リィタ:「久しぶりねキサナ。これ、途中で見つけたわ。貴方のでしょう?」

マスター:と言って、去年の帰翠祭の晩の、例の手鏡をキサナに見せる。
(HELP:例の手鏡って何?)

キサナ:「え、あれ、これどうしたの、リィタ?」

リィタ:「もうすぐ帰翠祭だから帰ってきたの。これから久しぶりにうちに帰るのよ。じゃあね。」

マスター:と言って、彼女は夕闇にすたすたと走って消えてしまいます。

キサナ:「いったいどういうことなのだろう・・・。」とつぶやいて、ぼ〜っと立っています。

マスター:・・・以上、隣にいたエリュオンくんに彼女は見えませんでしたし、声も聞こえませんでした。 

  リィタの顔は、暗い茜色の夕日に照らされてよく見えませんでしたが、不思議に大人びて、そして疲れて見えました。・・・キサナくん、あなたの胸のあたりに何か温かいものが触れるように感じるよ。

キサナ:えっ、何かな?

マスター:みると、あの薔薇石英のペンダントが薄く光を放っています。温かいものの正体はそれのようです。
(HELP:薔薇石英のペンダントって何?)

キサナ:「どういうことなんだ・・・。」 とつぶやく。

 あ、手鏡はどうしたんでしょうか?

マスター:彼女が持っていっちゃいました。

 えーと、いまの場面で、キサナとエリュオンはちょっとした霊感を受けました。《と言って、歌と水の魔法カードを手渡す。》

 そして、エリュオンは少し背筋が寒くなり、「恐れ」の感情が1d6上昇します。(注2)

エリュオン:うーん、4つ上がった。
(HELP:エリュオンって誰?)

マスター:キサナはこの出来事をどう感じたでしょうか?任意の感情を1d3上げてください。

キサナ:疑問?・・不思議?・・・なぜかは知らないけど、なんか直感的に「哀れみ」を感じたぞ。・・・1上がった。

マスター:キサナくん、さっきの手鏡を見て、あなたはこんなことを思い出しました。あなたが手鏡をあの老婆に渡したのは去年の帰翠祭の晩ですよね?

キサナ:うん。

マスター:「帰翠祭」で思い出したのですが、確か五年前の帰翠祭の晩のこと、リィタが急にいなくなった、ということがありました。あなたは必死に探したのですが、それでも見つからず、大人を呼びにいったのですが、ちょうどその時村で火事が起こり、誰も相手にしてくれなかったのです。

 結局、翌日になっても戻らず、村のもの皆で探しに行くと、緑川の少し下流の方で、彼女の提灯と、草履の片方が見つかったのです・・・

キサナ:ちょっとまって・・メモするのが追いつかない。

マスター:・・・続けます。何日たっても彼女は帰ってこなかった、で、こりゃあ水死したんだろうということになりました。でも、三週間して彼女は戻ってきました。川で溺れて流されて下流の町の岸ににたどり着いたけれど、熱とひどい怪我で連絡も取れず、なかなか帰れなかったということでした。

 キサナは、それ以来、何か彼女が変わったような気がしています。昔はよくしゃべり、そしてからからと笑う子だったんだけど、そういうことはなくなったね。

 ・・・さて、エリュオンくんの反応はどうでしょう?キサナは虚空に向かって何やらつぶやいてるようだけど? 

エリュオン:・・・う〜ん・・・変な奴だなあ、と。

一同:(爆笑)

エリュオン:最近、彼は物思いにふけることが多くなったなあ、と。

オルビス:冷静だなあ。

マスター:キサナとエリュオンは再び家路につきます。その途中、わきの草むらで「にゃおん」という小さな声が。

エリュオン:「ん、いまの猫の声か?」

 と言って、そっちへ行く。

キサナ:「何か聞こえたか?」

エリュオン:「猫だよ、猫。」

マスター:そっちの草むらに行くと、子猫がいる。エリュオンの猫の子供ですよ。

エリュオン:「こんなところまで来ちゃだめじゃないか。」

 と言って、抱き上げる。

マスター:その猫を見てエリュオンは思い出します。そういえば昔、リィタたちとよく遊んでいたころ、木賊屋敷には猫がいたんですが、最低でもここ二、三年は見てませんね。いったいあの猫はどこへいったのかな、といったことが頭をよぎります。

キサナ:「おい、どうしたんだ?」

エリュオン:「いや、昔、木賊屋敷に猫がいただろ?」

キサナ:「いたかな・・・ああ、そういえばいたね。」

マスター:キサナは、それでまた、さっきのことを詳しく思い出しました。そう、確か、リィタが溺れたのを知らせてくれたのは、その猫でした。

キサナ:ふはははは・・。

マスター:・・どうかいたしましたか?

キサナ:いや、プレイヤーとしてはいろいろ思うところがあるわけやな。

マスター:・・・あの晩、その猫がキサナに向かって、えらく騒がしくするから、何かと思ってついていったら川辺に連れていかれたんです。そして川原にはリィタの草履が一つだけ、落ちていたんです。

キサナ:あと提灯もね。

マスター:いえ、提灯と草履一足が見つかったのは下流のほう。これは、もう片方の草履ですよ。これを見て、あなたに悪い予感がよぎったわけですが。

オルビス:「猫の知らせ」というわけか。(笑)

マスター:で、五年前、リィタは川で溺れてから三週間たって戻ってきましたよね。その時にはその猫の姿はもう見なくなってましたね。まぁ、猫は死期が近づくと姿をくらますっていうし、あの猫はかなりの年でしたからねぇ。

エリュオン:確かに。

マスター:ヨウタ婆さんやサムシュ爺さんはその猫を、ミャアさん、ミャアさん、と呼んでいた。・・とまぁ、そんなところで。何かしゃべりたいことありますか?

キサナ:さっきのできごとで、ぼぉ〜っとしている。

エリュオン:とくにないよ。

マスター:じゃあ、シーンを変えます。

(注2)
 F-Roadsのキャラクターには10種の感情値があり、それがゲーム中に上下します。《プレイヤーの感情》と《キャラクターの感情》が明確に違うところがF-Roadsの特徴ですが、このリプレイではプレイヤーの任意でキャラクターの感情を上げることもあります。

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