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Scene5. 星猫カラヴェーク

マスター:夜になります。

シン:星洋燈を部屋にかけておきます。

マスター:まるで月の光のような淡い銀の光が部屋を染めます。

シルバス:「いい色だミャア。」

シン:・・・感傷的になって星を見ています。

シルバス:「ご主人、ご主人。ムイさんはわしが気に入った4人目の人間だミャア・・・1人目はご主人、2人目はクアリさん、3人目はグレイスさん・・・。」

シン:「・・・女ばっかりじゃん(笑)」

 一方、クアリのほうは・・・

エリー:「占いの仕事するニャア。今日は稼ぎ時ニャア。」

クアリ:占い台のところに、星洋燈をカタンと掛けておきます。

マスター:真白い昼の太陽のような光が辺りを照らし出します。

クアリ:「・・・それじゃあエリーそろそろ帰ろうか。」といって、10時頃に引き上げましょう。

エリー:「水上の家には行きたくない〜、ここでお別れだニャア。また明日の朝だニャア。」

 そうして深夜過ぎ、魔女猫たちはそろって、この地区の猫集会におもむきました。

マスター:比較的家の密集していない、樹木もまばらなところを選んで集会は行われています。

エリー:「あの猫を探さないかニャ?」

シルバス:「それはそうだ・・・・おい、君たち、物知りの猫を知らないか?」と、その辺の猫に聞いてみよう。

猫:「物知りの猫?・・・どいつのことかなぁ・・・。」

シルバス:「う〜ん、ムイちゃんと一番親しかった猫っていうのは・・・?」

猫:「一番親しいだと! 彼女は俺たちの女神だからな、お互い不可侵条約がある。抜け駆けしてべったりすることは許されてねえ。」

シルバス:「はぁ・・・。」

エリー:「そうだ、星に詳しい猫を知らないかニャア?」

猫:「星といえば・・・星猫のカラヴェークがよく知ってるだろう。あそこにいるぜ。」

エリー:「ありがとう・・・行ってみるニャ。」

マスター:そのカラヴェークと呼ばれた猫は、漆黒のつややかな毛並みの中に流星のような銀の一条が混じっている、美しい猫です。

シルバス:「カラヴェーク殿、貴方は星に詳しいそうですミャ?」

星猫カラヴェーク:「そうだ。俺様は世界で一番、星に詳しい猫だ。はっはっ!」

シルバス:「(小声で)なんか疲れた・・・。こういうタイプはどうも苦手だミャア。エリー、タッチ。」

エリー:「ムイちゃんに星とお花のことをお話ししたことがあるかニャア?」

星猫カラヴェーク:「そ、それが・・・それがどうしたっていうんだ?」

エリー:「ムイちゃんがね、あなた最近来てくれないって、悲しんでたわよ。」

星猫カラヴェーク:「・・・い、いや・・・それは・・・・目が見えないから・・花の色がどんなものか話してくれっていわれたのになぁ・・・星を引き合いに出しちゃ結局分からないじゃねえか。わるいことをしたぜ・・・・もう合わす顔なんかねえよ。」

エリー:「でも、悲しんでたニャア。一度会ってあげるニャア。お願いだニャア。」

星猫カラヴェーク:「こんな俺でもいいっていうのか?」

シルバス:「当たり前だミャア。そんなグチグチいってはだめミャア。」

星猫カラヴェーク:「(ぱっと明るい顔になって)そ、そうかぁ!じゃあ、いいよな!!」

エリー:か、軽い・・・。

星猫カラヴェーク:「そうだな、礼に面白いことを教えてやるよ。
 ・・・俺たちは星のことを勝手に、シリウスだの、アンタレスなどと呼んでいるがな、星たち自身は自分たちをどう呼び合ってるのか知ってるか?
 ・・・それはな、アメジスト、ガーネット、トパーズってなあ具合に、宝石や鉱石の名で呼び合ってるんだ。よけいな名前などいらんさ。あの星たちを見てみろや。これほどぴったりあった呼び方はないだろうよ。」

エリー:「じゃあ、蛍石って呼ばれてる星はどれかニャア?」といって夜空を指さす。

星猫カラヴェーク:「う〜ん、どれだとおもう?・・・蛍石、といっても紫のとか白のとかいろいろあるからなぁ。」

シルバス:星の中からどれか特定するのは気が遠くなるような話だミャア。

マスター:さて、猫集会は他にたいした話もなく解散しました。

エリー:「そろそろ帰るニャア。」

マスター:すると帰り際に、奇妙なものを見つけます。

 向こうに見えている十字路の高さ2メートルほどの所を、一抱えほどの光るものが通り過ぎて行きますよ。

エリー:「にゃんだニャア?」

シルバス:「不吉なものを感じるミャ、追いかけるミャア。」

マスター:追いかけて確認すると、一瞬立ち止まった姿が見え、それが頭が星の形をして光る、紺色の背広を着た男であることが分かります。(絵を見せる。)そのあと、その男はすうっと消えてしまいます。

シルバス:俺をまくとは強者だミャア・・・。

 そうして魔女猫たちは各々の寝床に帰って行きました。

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