回帰譚
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●『秋終え』(ランネロード) アキシマエ longerode

 ザリ祝祭日《冬至》の前日

 ファライゾンの北部地方で行われる、秋の思い出を集める祭。豊穣の季節を見つめながら地に落ちた秋の流れ星を、『冬の社』の水盤に凍らせる。

 選ばれし「秋終えの巫女」は、収穫祭の過ぎた秋の終わり、秋終えの祭までに流れ星を拾い集める。

 祭の当日は集落郊外の北に位置する「冬の社」にて儀式が行われる。巫女の決めた『ふたつの言葉』とともに流れ星は水盤に落とされ、魔法の氷で閉ざされるのである。

 これと対となる祭に『春喚ばひ』の祭がある。


●『春喚ばひ』(エスエマット) ハルヨバヒ es emtto

 アウル祝祭日《立春》 

 ファライゾンの北部地方で行われる、『冬の社』を燃やし春を呼ぶ祭。『秋終え』と対をなす。

 『ふたつの言葉』は、巫女から『春を喚ばふもの』二人に伝えられる。

 凍りついた水盤に向かい、二人がその『言葉』で春を喚ばうとき、『冬の社』は燃えあがり、水盤の氷は溶ける。溶けだした秋の流れ星は、豊穣の記憶を大地に伝える。そうして草木は、実りの時を想い、春に芽吹くという。


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寿琅啓吾 <soga@summer.nifty.jp>