五線譜を落としてしまった。
新しい曲を弾くのがいいと
人が言うから
はじめての街に出たけれど、
地図がないので困ってしまう。
通りすがりに道を聞いて、
嫌な顔をされた。
謝ってから、その場所へと向かう。
回り道をしたようで
譜面屋に着く頃にはもう
日が暮れていた。
知らない音楽がいっぱいで
ずいぶん迷っていたら、
男たちが声をかけてきて
いろいろ説明してくれた。
けれども、やっぱりよく分からない。
適当にうなずいているうらに、
高い譜面を買わされた。
帰りがけに地図屋を見つけて、
今度来たときは迷わないように
地図を買おうと思ったら、
渡されたのは落とした五線譜だった。
安い値段だったのが
なぜだか嬉しくって、
星空の下で新しい譜面を焼いてしまった。
強い風が吹いて、
古い五線譜もどこかへ飛んで行った。
けれども、もう気にはならなかった。
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