緑の庭と三つの歌





五線譜を落としてしまった。



新しい曲を弾くのがいいと

人が言うから

はじめての街に出たけれど、

地図がないので困ってしまう。



通りすがりに道を聞いて、

嫌な顔をされた。

謝ってから、その場所へと向かう。



回り道をしたようで

譜面屋に着く頃にはもう

日が暮れていた。



知らない音楽がいっぱいで

ずいぶん迷っていたら、

男たちが声をかけてきて

いろいろ説明してくれた。



けれども、やっぱりよく分からない。



適当にうなずいているうらに、

高い譜面を買わされた。



帰りがけに地図屋を見つけて、

今度来たときは迷わないように

地図を買おうと思ったら、

渡されたのは落とした五線譜だった。



安い値段だったのが

なぜだか嬉しくって、

星空の下で新しい譜面を焼いてしまった。



強い風が吹いて、

古い五線譜もどこかへ飛んで行った。

けれども、もう気にはならなかった。



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夏町 銅貨