Planet-Aに会いにゆく




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「あの、あたしの名前はスノゥ。ねぇ、そのPlanet-Aっていう青い世界には、どうしたら行くことができるの。」

 この少年が、あの青い世界からこちらにやって来たのならば、その逆さまもできるはずでした。

「この世で一番、遠くまで旅をするのは何だと思う?」

「ええと、鳥かしら、」

 スノゥは旅の途中、鳥たちが自分を追い越して遥かへ行くのを何度も見ました。

「確かに渡り鳥も遠くまで行くよね。けれど、一番遠くまで行くのは言葉なんだよ。」

「言葉?」

「そう、言葉さ。確かに人は一人で鳥ほど遠くへ行くことは出来ないけれど、誰かに言葉を伝えれば、また自分の代わりに旅を続けてくれる人がいるんだよ。そうして、伝えてゆけば、言葉はどんな遠くへでも行くことができる。」

「じゃあ、Planet-Aにも行くことができるのね。でも、あたしが行かないと、言葉も旅することができないわ。」

「それは順番が逆なんだよ。言葉があるから、君も遠くへ行けるんだ。僕だってそうさ。Planet-Aには、星の世界への旅を願う人がたくさんいたから、僕はその言葉を受け継いで、ここまでたどり着くことができた。だからもしも、この星の世界の人々が青い世界のことを願うなら、君はその言葉を継いで、Planet-Aへ行けるかもしれないよ。」

 もしも、少年の言うとおりだとすると、この世界のほとんどの人はPlanet-Aのことなんて知りませんでしたから、スノゥはそこへ行くことができないということになります。スノゥは重ねてたずねました。

「それじゃあ、あたし一人が願っても、あのPlanet-Aには行けないの。」

「ほんとうの願いだったら、きっと誰かに伝えられるはずだよ。願う未来が遠いほど、それは遥か遠くまで届く、ほんとうの言葉になる。だけど、誰かに伝えないとそれはほんとうの言葉ではなくなってしまうんだ。」

 そういえば、あの老人星も「ほんとうの言葉」のことを言っていました。

「あたし、ほんとうの言葉をなくしたおじいさんに会ったことがある。少し悲しそうな目をしていたわ。」

「もしも、自分の願いを誰にも言えなくなったら、願いどころか、なにもかもみんな、なくしてしまうんだよ。」

「じゃあ、例えばあなたのほんとうの言葉はなにかしら。あなたは、Planet-Aからなにを伝えに来たの。」

「はじめに言ったじゃないか。君に会えてとても嬉しいよ、って。新しい出会いが僕たちみんなの願いなのさ。そんなふうに、それはとっても簡単な言葉でいいんだ。」




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夏町 銅貨 <soga@summer.nifty.jp>