Planet-Aに会いにゆく




- 3 -



 旅の途中にはこんなことがありました。

 スノゥの行く手の星の海を、銀河郵便航路の定期便が渡っていました。船の水先案内人は、白く輝く長い髭を持った老人星です。そのとき、スノゥには青い窓を探す当てがまったくありませんでした。行く先々でたずねてみましたが、大人は誰も、知らないか真面目にとりあってくれないかのどちらかです。だからといって同じ年頃のむすめにも話のできる友達のいないスノゥとって、定期便はまさに助け船に思えました。物知りの老人星ならば、なにか教えてくれるかも知れなかったのです。

「ねぇ、青い窓がどこにあるのかごぞんじかしら。」

 スノゥは老人星にたずねました。けれども、この年老いた星は耳が遠くなってしまったのでしょうか、なかなかスノゥの問いかけに答えようとしません。ただ大きく広がった長い髭だけがゆらゆらと揺れて、その様子はじっとなにかに聞き入っているようにも見えました。

 しばらくたって、スノゥがしびれをきらせたころ、老人星はようやく口を開きました。

「やぁ、青い窓かい。あれはもう、みんなに忘れられた窓だよ。」

 それを聞いたスノゥは、この老人星も他の大人と一緒なのだと思って、口をとがらせました。

「お嬢さん、青い窓も大切だけれど、何か他の話もしてゆかないかい。そら、ちょっと耳を澄ましてごらん、遠い星の波音が聞こえてくるよ。」

 少女の突き出した口に答えて、老人星が言いました。けれども、それはスノゥの聞きたかった言葉ではありません。耳をすますと、他のむすめが髪のことを話すのが聞こえてくるようで、とても嫌な気持ちになりました。老人星はスノゥの様子を確かめるようにちょっと間をおくと、少し悲しげな目をしてこう続けました。

「あのとき、私もみんなもほんとうの言葉が言えなかったから、窓をなくしてしまったんだ。けれども、ほんとうの言葉はいつだって新しく生まれようとしているんだね。今の私には、そのちょっとした手助けが出来るかもしれない。ほら、これを持って行くといいよ。」

 老人星はそう言って、銀色のピンを手渡しました。ほんとうの言葉、というのはいったい何のことでしょう。でも、今のスノゥにはそれよりも、青い窓のことのほうが大切でした。スノゥはヴェールを髪に止めるものが欲しいと思っていましたから、ピンだけは受けとりましたが、窓のありかを教えてくれなかった老人星にはお礼も言わずに別れました。




次へ


夏町 銅貨 <soga@summer.nifty.jp>