Planet-Aに会いにゆく




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 スノゥはいつのまにか、見知らぬところに流れ着いていました。光の河に流されて、しばらく気を失っていたようです。道をたずねようにも、あたりには誰も見当たらず、薄暗く寂しい景色がずっとむこうまで続いていました。ただ道に迷うのは、旅の好きな彼女にとってどうってことはなかったのですが、大切なヴェールのないときの迷子は、帽子をなくしたかかしのようでとても頼りないものでした。

 そのうえ、今が一体いつであるのかさえもよく分かりません。星の空に掛かる星雲は自動巻の標準時計で、どこにいても正しい時を教えてくれるはずです。けれどもここはずいぶん遠い場所のようで、星雲の小さな文字盤を読みとることはできませんでした。そもそもこの場所からは、同じような星雲がいくつも掛かって見えたので、少女がいつも見ている星雲がどれであるかさえ分かりませんでした。スノゥはもともと自分の時計を持ってはいません。ひとりぼっちでいるのは慣れっこのはずでしたが、頼りになる時計がひとつもないことに気がついた少女は、世界の果てで自分が消えてしまいそうな気がして、胸の奥がぐらぐらと震えました。

 なにが間違っていたのでしょうか。スノゥにはその心当たりがたくさんありました。それは例えば、老人星にちゃんと話せなかったからかもしれません。そして、冬のむすめのせっかくの誘いに、答えられなかったからかもしれません。あのむすめとは良い友達になれるような気がしましたが、それなのに逃げ出してしまった自分は、実は、黒い髪のせいで星のむすめと友達になれないのではなかったことに気がつきました。けれども、それではいったいなにが理由だったのでしょう。

 そうして考えを巡らせるうちに、スノゥは眠ってしまっていたようです。はっと目を覚ました時、少女の頬は涙でぬれていました。涙を流してもなにも変わりはしません。でも、このときは、ただ一つだけ変わったことがありました。スノゥが顔をあげると、星の空にはいつの間にか、窓が一つ、開いていたのです。窓のむこうにのぞく、まるい景色はいちめん魔法の色。それは、全く言い伝えのとおりで、きっとこの世界で一番良い人の心は、こんな色をしているだろうとも思わせました。それに比べて、自分の心の色は髪と同じ真っ黒であるとスノゥは思いました。

 スノゥはその青い窓に向かってけんめいに歩きました。手もいっぱいに伸ばしました。けれども、けして、その窓にたどり着くことはできませんでした。




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夏町 銅貨 <soga@summer.nifty.jp>