Planet-Aに会いにゆく




- 7 -



 スノゥは、足が棒のようになっても、まだ歩き続けました。この少女は、ひたむきさに頼る以外になすすべを知らなかったのです。すると、窓の青の中からなにかが自分のほうへ向かってやってくるのが見えました。はじめは疲れて目がくもってしまったのかと思えるほどの小さな影でしたが、近づくにつれて、それが銀の小舟であることが分かりました。あの老人星の定期便よりもはるかに小さなその舟は、舟と同じ銀色の髪の少年が船頭をしていました。舟は金色の帆をいっぱいに張って、星の海をまるで滑るようにしながら、真っ直ぐスノゥの方を目指してやって来ます。

「こんにちは。」

 船頭の少年は大声でそう呼びかけました。少年はこの星の世界の人ではないように見えましたが、その銀の糸で織られたようなきらきら光る服装は、少年をつくりものの星のように見せました。少年は、スノゥの方に漕ぎよせると、今度はこう言いました。

「やぁ、君に会えてほんとうに嬉しいよ。」

 そして、満面の笑顔を見せました。出会ったばかりの少年にそんなことを言われたものですから、スノゥはちょっと戸惑って、口ごもってしまいましたが、けれども、今度は勇気をふりしぼって、返事をしました。

「こんにちは。あの、どこかであなたと会ったことがあるかしら、」

「僕が君にあったのはこれがはじめてだよ。それどころか、僕がこの星の世界に来てから誰かと出会ったのは、これがはじめてなんだ。だから僕、とても嬉しくて。はじめまして、星の世界の人。」

 そう言って、少年はまたスノゥに微笑みかけました。それはとても人なつっこい笑顔でしたので、少女は少しほっとして、その場に座り込みました。スノゥは同じ年頃の子どもと話すのに慣れてはいませんでしたが、心細さを振り払うにはなにかしゃべっているのが一番だったので、少年になんとか話しかけようとしました。

「じゃあ、もしかしてあなたは、あの窓のむこうに見える青いところからやって来たの、」

「窓、ああそうか。ここからだと窓に見えるかもしれないね。そうだよ、僕はあの青い世界からやって来たんだ。」

 少年はなにか含むような言い方をしましたが、その指さす先は、確かにあの窓でした。窓のむこう側には、きっと星の世界とはまた別の世界が広がっているのでしょう。

「僕の名前はPlanet-A《プラネット・エー》。これは、あの青い世界の名前と同じなんだ。」




次へ


夏町 銅貨 <soga@summer.nifty.jp>