『帰翠祭』

Far-Roads to Lord リプレイ

目次
ゲームマスターより
プレイヤー用資料
キャラクター紹介

Introduction1 鳶の丘
Introduction2 黄昏の十字路

Scene1 木賊屋敷の夕べ
Scene2 水・魔
Scene3 探索
Scene4 社
Scene5 真相
Scene6 翡翠の川原

Epilogue 帰翠祭

感想戦
あとがき

ゲームマスターより

 このリプレイは94年の秋に京都大学RPG研にて行われたFar-Roads to Lordの単発(キャンペーンではない)セッションの模様を文章化したものです。(プレイ時間は4時間程度。)シナリオとしてはあえて分かり易い筋書きにしており、プレイヤーが話の筋をだいたい推測したうえで、どのように話を進め、解決すれば面白い話になるかを考える、その過程を楽しむ、という形式となっています。
 《演劇のようなシナリオ》と、何度か評されましたが、私自身TRPGはこうあるべきだ、とは思っていません。ただ、TRPGの楽しみ方の一つとしてこのようなものがあってもよいと思います。
 それでは、ベテランプレイヤーの巧みなセリフ回しをお楽しみください。

《参加メンバー》

◆前田 克也・・・キサナ=ライレーン担当
  今回は特に御自身のシナリオ傾向と似ていたことが吉とでたようです。悩める主役、どうもご苦労さまでした。《恥ずかしい台詞大賞》を捧げます。(笑)好きなRPGは 007(システム)ブルーフォレスト/ギアアンティーク(ワールド)。

◆越中 聡・・・・セレーグ=ローカイノス担当
  脇から主人公にちょっかいをかける役は得意だ、とよくおっしゃっていますが、まさにその通りでしたね。(笑)存在感ある剣士でした。好きなRPGはクトゥルフ/エルリック/ルール・ザ・ワールド(システム)、指輪物語RPG(ワールド)

◆かつまん・・・エリュオン=スウォーター担当
  その台詞の絶妙の間は残念ながらリプレイでは分からないでしょう。(笑)このシナリオでは、とかく暗くなりがちだったPCたちの中で、ただ一筋の光明となりました。好きなRPGはソードワールド/クトゥルフ。

◆グローバル艦長・・・・オルビス担当
  独立したキャラクターで根本的にはシナリオに絡みませんでしたが、主役の相談役として、話の脇を固めました。彼の話だけで外伝が一つ創れそうです。好きなRPGはマクロスライフRPG。

◆寿琅 啓吾・・・・ゲームマスター担当
  筆者です。このシナリオはシチュエーションを変えながら三度行われており、これはその内の二度目のものに当たります。もう二年も前のものなので少し恥ずかしいですが、このシナリオが私のその後のマスター傾向を決めてしまったようです。好きなRPGはBeyond-Roads to Lord。

プレイヤー用資料

 このシナリオでは、以下のような資料をプレイヤーに読んでもらった上で、キャラクターを創ってもらいました。このリプレイを読む上で必要な情報もございますので、御一読下さい。

《場所》

 ギュノンから川沿いに北へ120キロメートルほどのところにある、鳶の丘村(ナルモザムnalmodsam)(<< clickで地図表示) での出来事。

《帰翠祭 きすいさい》

 鳶の丘村では年に一度、先祖の霊の帰ってくる期間を帰翠会(きすいえ)と呼び、彼らをまつる風習がある。(お盆のようなもの。)その期間の最後に行われるのが帰翠祭という祭であり、そこで先祖の霊は再び送り出される。また祭りの後には、歌垣(かがい)の変化したようなものがあり、新たな恋人たちの語らいの時間となる。

《……歌垣は、元来収穫祭のあとに行われていたが、この村ではなにかを契機として彼岸と此岸の狭間の時空において行われるようになった。むろんその内容は変質し形骸的なものとなっているが、この生死の時空と歌垣との関わりについては、この村の仮想トーテムである鳶が何らかの意味を持っているだろう……》
(へリアの異端民俗学者、ワレール=シュナッハン:「ナーハン・ギュノロンの民俗に関する若干の考察」より抜粋)

《HP版編注:本文中で帰翠会は紫赤の月となっていますが、これは黄緑の月、メディート祝祭日の頃としたほうが適当でしょう。本リプレイでは、実際のセッション通りに紫赤の月のままにしてあります。》
《最低必要なPC》

・主役の少年(15才)
 今年から若衆組(村の構成員による寄り合い、組合のようなもの)に参入することになるから、実はもう少年ではないのだが。5年以上前に母親を失っており、父と二人で暮らしている。
 一年前の帰翠祭の晩、旅芸人のお婆さんからもらった 薔薇石英のペンダントを身につけており、その代価として昔からずっと大切にしていたものを渡している。そのペンダントはなつかしい人《母親のことか?》にまた会えるというふれこみで、もしもそれを望むなら、肌身はなさず 身につけているようにといわれている。しかし、あれから一年が過ぎようとしているのにその兆候はないので、一杯食わされたのかもしれない。
 リィタ(下記の《登場人物》参照)のことが気になる存在だとうれしいな。でも、何かここんとこ彼女とは、しっくりこないような感じがする。若衆組に入ってからはなかなか会えないしね。

・旅の剣士
 たまたまこの村を通りかかったが、妖魔がらみの事件に巻き込まれ、それを解決したことによりこの牧歌的な村にとどまるように頼まれている。せめて、帰翠祭が終わるまでは、と。イアルト夫妻の住む 木賊(とくさ)屋敷 に逗留する。

《その他のPC》
・少年の友達(猫好きだったらいいかも。) 
・木賊屋敷の居候(人間、その他妖精など)  

《登場人物》

・リィタ=イアルト(15才)
 イアルト夫妻の一人娘。
 しっとりとした黒い長髪と、くりくりとした目が特徴的な少女。いい子だと評判がよい。
 5年前と比べて、背は伸びたけど、顔はあまり変わっていない童顔。

・サムシュ=イアルト(64才)男:農夫
 ヨウタ=イアルト(66才)女:農夫
 村の名士の家柄で、屋敷は大きく 木賊(とくさ)屋敷 とよばれている。
 《木賊:多年生常緑シダ類。茎は堅く物を磨くのに用いるので砥草ともいう。
  この木賊の絡まっている木造の屋敷で先祖代々のものである。》
 遅くに生まれた一人娘リィタと三人で暮らす。
 屋敷は三人には充分なほど広いので、村を救ってくれた旅の剣士に宿を貸す。
 村の先祖神をまつる社の 神主のような役職をかねている。


《キャラクター紹介》

●キサナ=ライレーン 狩人 15歳 男 

 人間  信仰:オザン 地縁:光 霊縁:風 クステ:一角獣
 鳶の丘村の住人。元気一杯、単純な性格。母親は九年前にこの世から去り、それによる心の傷がまだ残っている。リィタという少女を姉かつ母親のように慕っていたが、最近彼女を女性として意識し始め、守ってもらうのではなく守ってあげたいと思うようになった。そのせいか、最近リィタとはうまくいかないように感じる。
 エリュオンとはいい意味での悪友である。父親は鍛冶屋。オルビスのことを兄のように頼りにしている。
 本編の主人公。

マスター:昨年の帰翠祭の晩、旅芸人のお婆さんに渡した物は?(上記の《最低必要なPC》を参照。)
キサナ:母親の愛用していた手鏡です。あと、設定に《少年から青年への階段を上っている最中。》というのを付け足しておこう。
オルビス:俺も、少年から大人への葛藤する云々、というツッコミを入れようと思ってたんだ。(笑)

●セレーグ=ローカイノス 剣士 29歳 男 

 人間  信仰:ガルパニ 地縁:海 霊縁:火 クステ:一角獣 
 波斬剣(ヴァクウァセヴァ)の使い手。四王国時代から続くストラディウムの名家の出身。五男でありながら武芸で目立つ自分に対して兄弟が冷たくなってしまったことを悲しみ、家を出る。以後十年近く傭兵として生活しており、近頃、別の訳あってやはり放浪中。勇敢で正義感が強いが、人を遠ざけるような雰囲気を持つ。自分はこの世界でいつも一人で生きてゆかなければならないというコンプレックスを持っている。オルビスがただ者ではないことに気づいている。現在はイアルト夫妻の住む木賊(とくさ)屋敷に逗留している。

マスター:この村に逗留するきっかけとなった事件は?
セレーグ:何かの邪念のこもった剣を村人が引っぱり出してきて、その人がそれに操られて暴れているのを止めた、と。
キサナ:「西の大きな国から来た剣士さまだって。とってもすごいね、エリュオン?」
エリュオン:「うん、そうだね。」(笑)

●エリュオン=スウォーター 農夫 15歳 男 

 人間  信仰:イーヴォ 地縁:光 霊縁:地 クステ:鷲 
 鳶の丘村の住人でキサナとは親友同士の猫好きの少年。キサナよりも大人としての自覚を持っているが、そのように扱ってくれる周囲に対してはうれしく思いながらも、まだ戸惑いを感じている。父親も農夫であり、よい関係を保っているようだ。生まれたときからいつも側には猫がおり、現在でも猫を飼っている。

オルビス:その「大人になったという自覚」はどんな風に現れ出てきているんだ?
セレーグ:世間を知ったふりをしているとか。
エリュオン:例えばキサナとしゃべってるとき、「お前、こんな事も知らないのか、ほら、俺と一緒にこうすれば分かるだろ。」みたいな感じ。


●オルビス(本名:ユーリッヒ=フォン=ワーレンバーグ) 王族 21歳 男 

 龍人(白流走)  地縁:石 霊縁:水 クステ:不明 
 知られざる種族《白流走》の一人である、亡国の皇子。15歳で王国が滅んだ後、西へ流浪、行き倒れていたところを村のアリオス夫妻に助けられる。それから四年、現在は出自を隠して村人として生活しているが、内心、自分の宿命に生きようとしている。・・・・・今は雌伏の時であると。キサナのよき相談相手。
(白流走の外見はほぼ人間と同じ。)

マスター:他に設定は?
オルビス:・・あと、気がかりなのはフィアンセのアリシアの存在である。相思相愛。
セレーグ:そんなのがいたのか。(笑)
オルビス:風の便りでは他の国の皇子と結婚しているという事であるが・・・それについて悩んでいる。(笑)

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