Scene 2  Scene 3

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Chapter 1.
 出逢い
You're always welcome in the town !
「出逢いの魔法ってしってるかい?
 それは真白い閃光。
 星の点灯夫だってかなわない、
 運命を輝かせる力さ!!」
               マジック
               魔法猫 ハーン

Scene1. 呉藍クーラン


マスター:街の主幹道路の両脇には普通よりもひと周り小さい赤がね色のランプが掛かっています。洋燈のガラスの膨らみの中心では、うっすらとした光がまたたいているように見えます。

クアリ:「あれが星洋燈・・・。」

シン:「ランプ・・・洋燈かぁ・・・いいな・・・。」

シルバス:「ご主人、うちにはあったかミャア?」

シン:「ああ、そうだね。うちにも一個ほしいね。」

エリー:「でも、ほんといい時期にこっちに引っ越してきたニャア。」

クアリ:「うん。」

クーラン:「あ、洋燈ほしい?なら、いまから買いに行こうよ。」

シン:「そうだ!灯ともしてくれない?」

クーラン:「僕が?」

シン:「うん。」

クーラン:「・・・でも僕はまだ一人前の星魔法使いじゃないから、ちゃんとした力は持ってないんだ。

  今、お師匠から一人前になるための課題を渡されていてね、それを解かなきゃ、僕は一人前になれない・・・。

 『星魔法とはいったい何か』

 っていう、なんだか抽象的な課題なんだけどね、

 ・・・どうしても、星祭りの晩までに解決しなきゃ。」

クアリ:「・・・また、一年おあずけになるってこと?」

クーラン:「いいや、一人前と認められなけりゃ出来ないことがあるんだ。」

シン:「灯をともすこと?」

クーラン:「ううん、僕は灯をともすことはできるんだ。でも、灯をともしてもそれで『人の願いをかなえること』は一人前でないとできないんだ。」

シルバス:「むつかしいミャア。」

シン:「わたし、魔法が何かなんてあまり考えたことがない。」

クーラン:「もちろん、一人前でないと自分の願いもかなえることは出来ないんだ・・・僕、いますぐにでもかなえたい願いがあってね、だから今度の星祭りの終わるまでになんとか一人前になろうとしてるのさ。」

クアリ:「むつかしいわね・・・。」

エリー:「そうだ、ご主人様、あとでちょっと占ってあげるニャア。」

クアリ:「そうね・・・。」

シルバス:「あまり悪いことはいわないようにした方がいいミャア(笑)」

クーラン:「あ、先生。」

マスター:といって、クーランは礼をします。褐色の衣を着た僧が向こうからやってきます。

僧:「がんばりなさいな。」

マスター:僧は軽くほほえんでそういうと静かに去って行きました。

クアリ:「あれがお師匠さま?」

クーラン:「ああ、あれは学校の先生。別に普段から星魔法の仕事をやってるわけじゃないんだよ。学校もあるし。

 星魔法使いになるのは年に一度だけ。今日はただ単にサボってんだけど、勘違いしてくれたみたいだ(笑)」


学校と僧侶

 学校は6年の義務教育があります。これは寺子屋から発展したもので、僧侶が教員となってます。

 義務教育卒業後は高等教育機関に進む人や、近頃では留学する人もいます。


     
Scene2. 洋人ファランの少年


マスター:さて、クーランは中華街の方へ向かって歩いてゆきます。

クーラン:「星洋燈を買うのなら、ぜひ、お師匠のところでね(笑)」

シン:「うん!」

マスター:そうして、ここの(A地点)クローンに架かる橋を渡ろうとしたとき、左脇のほうでザブンという音がして水しぶきがあがります。

クアリ:「だいじょうぶ、エリー?」といって、水がかからないようにエリーを抱きかかえます。

マスター:そちらでは、上半身裸の子供達がクローンに飛び込んで遊んでいます。クローンには、魚や果物を山と積んだ底の浅い船がひしめいていて、麦わら帽をかぶった行商人の女達の売買の声が子供達の笑い声とともに聴こえてきますよ。

シルバス:「おや、魚だ。エリー、ちょっと狩りに出るかミャア?」

エリー:「でも水に濡れるニャア。」

シルバス:「あ、それもそうミャ。」

シン:「やめときなさいよ(笑)でもいいなあ、わたしも泳ぎたいなぁ。」

クアリ:「久しぶりに水につかりたい気分ね。」

マスター:・・・なんていいながらみていると、そんな風景にそぐわない子供が橋の上にいます。白くまぶしい洋服を着た・・・さっきの洋人の男の子です。その子はじっと、男の子や女の子の飛び込んだりして戯れているその川辺を眺めていた・・かと思うと、突然、川に飛び込びました・・・正確にいうと飛び落ちたという感じですね。その男の子は泳げないようにみえますから。

シルバス:「ご主人、様子がおかしいミャ。」

シン:「ああっ、助けなきゃ!」・・・って、わたし泳げるの?

マスター:泳げんこたぁないでしょう。

クアリ:あたしたちの他に助けられそうな人はいないの?

マスター:君たちより近くにはいませんね。

シン:よっしゃ、好都合なり! ザボ〜ン!!

  「シルバスはそこにいてね〜。」

クアリ:「あっ、シンちゃん・・・。」

マスター:(笑)飛び込んだら、すぐその男の子のところにたどり着くことができます。この深さだと、シンは足がつきますよ。

シン:じゃあ、抱きかかえて、持ち上げます。

  「だいじょうぶだよ、だいじょうぶだからね、だいじょうぶだよ。」

男の子:「(ぼそっと)有り難う。」

シン:「どうする?このまま水の中にいて、泳ぎでも覚える? それとも上にあがる?」

クアリ:「・・・シンちゃん、どぉ?」

シン:「うん、だいじょうぶみたい〜!」

マスター:、上を指さすジェスチャーをする

シン:「あ、上に行くのね。」

シルバス:「・・・早く上がるミャア・・・。」

シン:「は〜い!!」

シルバス:「あんまり世話をかけさせないでほしいミャア。」

クアリ:「まぁ、いいじゃないの。」

マスター:男の子のきれいな洋服はびしょびしょになって台無しです。もちろんシンのもね。

エリー:「ちょっと近づいてほしくないニャ、濡れそうだニャア。」

シン:ん〜と、わたし下着くらい着てるから、上着はザバッとぬいで、ジャバジャバしぼっちゃうけど・・・。

シルバス:「人間は不便だミャア(笑)」

マスター:男の子は?

シン:「ちょっとごめんね、上着だけぬいで、しぼるだけしぼろう?」っていって、脱がせる。

  「クーラン、ごめんね(笑)なんだか変なことになっちゃって・・・。」

クーラン:「いや、まあいいけど(笑)」

マスター:といって、クーランが近づいてきます。そのとき、男の子がクーランの持っていた星洋燈を指してこういいます。

男の子:「・・・其れは、何?」

クーラン:「え、ああ知らないのかい。これは星洋燈っていってね、自分の願いをかなえることが出来るんだよ。」

男の子:「(小さな声で)へえ・・・。」

クアリ:しゃがみ込みながら、

  「君にもなにか、願い事はあるのかなぁ?」

男の子:「・・・・・。」

クアリ:「あたし、クアリっていうの。あなたは?」

男の子:「・・・・・。」

マスター:男の子は、なにかよくわからない、といった顔つきをしています。

シン:「おうち、どこ?」

男の子:「・・・遠い所から来たの。」

シン:「ひとりで帰れる?」

男の子:「・・・大丈夫・・一人で行けるよ。」

マスター:男の子はなにか考えごとをしているように見えます。

 PCは何とか男の子と打ち解けようとしますが、男の子はどうも表情が硬く、ものをしゃべりません。

シン:「う〜ん、笑わないね。」

マスター:・・・そうして、皆さんが男の子に積極的に話しかけていると、彼は、

男の子:「蛍・・・。」

マスター:と小さくつぶやいて、シンの手をきゅっと握ります。

シン:「ほたる・・・蛍って、光る『蛍』よね?」

マスター:すると男の子はさらに表情を硬くして、ぱっとシンの手を離すと、服を持って、タ、タ、タと逃げるように走ってゆきます。

シン:・・・にげられたぁ・・・追いかけますっ。

マスター:シンは男の子が走ってゆくときに「捜さなきゃ・・。」といっていたことに気づきます。

シン:「・・・?」

クアリ:う〜ん、一瞬、このまま待った方がいいかなっと思ったので、少しで遅れつつも追いかけます。

マスター:それならば、その場に男の子の洋服のボタンが一つ落ちていることに気づきます。

クアリ:「あら?」拾ってみますけど。

マスター:それはアクアマリン色の綺麗なボタンです。

 結局、全員追いかけることになりましたが、この男の子は不思議に足が速く、雑踏の中に紛れ込んで見えなくなってしまいました。

シン:「え〜っ、え〜っ、いなくなっちゃったぁ!」

クアリ:後から追いついてきて「シンちゃん、あの子どうなったの?」

シルバス:「俺でも見失ったミャア。なかなか不思議な少年だミャア。」

クアリ:「あの子、これを落としていったわ。」

シン:「あ、綺麗なボタンだけど・・・どうしよう。

 ・・・ねぇ、クーラン。『蛍』って洋燈のことだと思う?」

クーラン:「う〜ん、そうかなあ・・・。」

シルバス:「ご主人、ご主人。わしの記憶が確かならば、あのとき蘭をみて『これはとうさん、かあさん・・』とかいって、『蛍だけがいない』といってたような気がするミャア。それとなんか関係があるんじゃないかミャア。」

シン:「う〜ん、でも・・・」

シルバス:「今となってはしょうがないミャア、ここは本題にもどって洋燈を買いに行くミャア。」

クアリ:「そうね・・・。」

Scene3. ムイ

マスター:しばらく行くと、広場が見えてきます。そこにはいくつか屋台が出ているのですが、銀細工を売る屋台の脇にティアン・ヨッドという小木があります。


ティアン・ヨッド(ロウソクの滴)

 《英名 Golden dew drop:黄金の水滴》
 橙色の小さな実が名前のいわれで、水盤に落ちて丸く固まったロウソクの滴に似ています。
 薄いヴァイオレットを濃い紫で締めた感じの小さな花も可憐です。


クーラン:「あ、ムイ!」  

マスター:そのティアン・ヨッドのそばに、薄い黄色一色の長袖と長ズボンを身につけた女の子が座っています。

シルバス:何歳くらいですか?

マスター:魔女達と同じくらいの歳に見えますよ。

ムイ:「クーラン? 今日貴方は学校じゃなかったかしら? そんなことじゃお医者様になんてなれないわよ。」

クーラン:「医者になるにしてもずいぶん先の話だしなぁ・・・。(と、ムイの顔をじっと見つめて。)それよりさあ、友達を紹介するよ。クアリ、シン、彼女はムイ。そこの奥のお屋敷に住んでるんだ。」

シン:「こんにちは!」

クアリ:「はじめまして、クアリです。」

ムイ:「はじめまして。」

マスター:といって彼女は両手を宙に差し出します。
      (マスター、目をつぶって手を差し出す)

  彼女は目が見えないようですね。

シン:じゃあ手を握って握手する。

  「わたしはシン!」

ムイ:「わたしは、ムイ。よろしく。」

シン:「よろしく。ええっとね、わたしは魔女なの。」

ムイ:「へぇ、すごいわね。」

シン:「(微笑)あまりすごくはないけどね。でね、ここに魔女猫がいるの。名前はシルバス。」っていって、シルバスをかかえてムイの手に触れさせる。

ムイ:「・・・あと、もう一人、猫さんがいるのね?」

エリー:「ニャア。」

クアリ:「あたしの猫のエリーよ。」

ムイ:「(ほほえみつつ)猫さんたち、こちらへおいで・・・。」

マスター:といって、ムイは手を地面に伸ばします。

シルバス:「ミャア。」彼女のいうとおりにします。

エリー:「ひざの上がいいニャア。」

マスター:エリーはムイのひざの上で丸くなっている、と。じゃあ、ムイはシルバスを抱き上げて、

ムイ:「・・・わたし、猫さんは大好き。わたしにあの子たちは見えないけれど、あの子たちがいつもなにをやってるのかはみんな知ってるのよ。・・・あの子たちが毎日、わたしに教えてくれるの。・・・信じてくれないかしら?」

クアリ:「信じるわ。」

シン:「うん、わたしたちだって、猫としゃべってるんだもの。」

クアリ:「あなたにも猫の言葉が分かるの?」

ムイ:「ええ。わたしには分かるわ。」

シン:「へえ、すごいね。・・・ところでムイちゃん、何してるの?」

ムイ:「ここでこうして耳を澄ましていると、いろんな音が聞こえてくる・・・目が見えなくてもいろんなことが分かるわ。

 ・・・目が見えないのは前世での行いがきっと悪かったのよ。しょうがないわ。(にこりと笑う。)」

クーラン:「しょうがなくないよ。(ぼそっと)きっと・・・。」

ムイ:「え?なに?」

クーラン:「い、いや・・・。」

シン:(「う〜ん、クーラン純愛、って感じ。」)

シルバス:(「若者はいいミャア。」)

クーラン:「・・・あ、ムイ、今年の洋燈はまだだね。」

ムイ:「ええ、そうね・・・今から貰おうかしら。」

クアリ:「じゃあ、一緒に行きましょうか?」

ムイ:「ええ。」

シルバス:「ご主人、ご主人。あの子とても不思議だけど、とても優しい匂いがするミャア。」

シン:「うん、なんだか優しい子みたい。」

ムイ:「クーランは洋燈に何を願ったのかしら?」

クーラン:「え・・・あ、洋燈いま持ってるんだけど、、、たいしたことじゃ、いや、たいしたことなんだけど・・・。」

ムイ:「変なの。」

シン:「(笑)たいしたことだよね?」・・・なんとなく分かった(笑)

クーラン:「えっ!?」

クアリ:シンに向かって「シーッ!」とやっていましょう(笑)

クーラン:「・・・じゃ、お師匠の小屋にゆこうか。」

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