星夜譚 | |
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それは胡蝶の星雲がひときわ鮮やかに見えた赤の月の夜のこと、二人の紳士が外宮の庭先で話し込んでいました。 「星の娘というものは、どこにいるのだろうか。」 「君はそんなものを少しでも信じるのかい。夜空の星が地上へ降りるなんてことがあるとは思えない。」 黒い外套の紳士は、天より落ちた星の化けた娘が世界をさまよっているという噂の信憑性とその期待についてつらつらと説きます。若い方の紳士はというと、その手の杯に香る金柑酒を口にして、それを聞き流したあと、こう言いました。 「そもそも日の光に較べて星の光というものは、たいそう害のあるものだ。そんなあやかしが地にあることは、はたして許されるだろうか。」 「なるほど、害はあるだろう。しかし、それは煙草や酒と同じ慰みとして世に必要なものだ。」 二人の紳士はふと私の方を見て、こう尋ねてきます。 「おい、君はいったいどう思うんだね。」 私が答えあぐねていると、何かが弾けるような音がして二人の紳士は消えてしまいました。そして急に辺りは闇につつまれ、ただ柑橘類の匂いがするだけで、他にはもうなにも有りませんでした。 |